NIKKEI-NETによると、鳴り物入りで本格導入した住基ネットがいきなり見舞われた接続障害に関して、片山総務相は「全くトラブルとは言わない初日特有の現象だ」とのたまったそうで、我々ベンダー・SEの立場からすると非常に心強く思う。(笑)
一方で当事者に当る地方自治情報センター(LASDEC)によると
これまで全国の自治体職員は、同じ自治体内部の住民を対象にして業務を行ってきたため、システムを操作する場合に住所を打ち込む習慣があまりない。これまでと同じ感覚で住所を入力せずに操作した結果、全国サーバへ問い合わせが殺到したのではないかという事だ。そういう習慣…ていうか自治体事務のワークフローを考えると、まずは当の自治体サーバ、続いて都道府県サーバ、最後に全国サーバという順に問合せを行うのが筋で、いきなり全国サーバへ問合せるという仕様の問題では無かろうか?
2003/07/09 福岡市博多区中州にて |
これは裏を返せば「自治体事務のワークフローに関する調査が不十分なまま、ベンダー側の一方的な思い込みで策定した、という極めてありがちなミス」と言えるのかも。あくまでも自分の個人的な想像だけれど。
確かに現実問題として3年ほどで異動を繰り返す公務員の世界では情報担当職員と言えどもシステムに関する経験は乏しく、ベンダーのSEと対等に渡り合える知識を持っている人は皆無だ。価格競争入札による業者選定の仕組みから「基本仕様策定」と「システム開発」をそれぞれ別のベンダーが受ける事も珍しく無く、そもそも電子自治体ソリューションはここ数年活発化してきた案件だけにSEの経験も充分とは言えない。そういう面からも顧客とSEが充分にコミュニケーションを取れていないのではないかと思われる。
という裏事情はさておき「1時間に1日分のアクセスが…」と言ってもたかだか8倍ではないか。転入・転出が集中する年度始めや税金の納付時期などのピークを考えればその程度の負荷に耐えられないシステムってのもまた問題という気がするのだが、それってどうよ?
田中康夫・長野県知事をして「お粗末」と言わしめた住基ネット。誠に侮り難し。
ちなみに総務省の指定情報処理機関である地方自治情報センター(LASDEC)には平成15年度予算ベースで国の補助金が57億円、都道府県と市町村の会費が合せて3億円近く、都道府県は更に総合行政ネットワーク(LGWAN)の負担金として32億円、全て引っくるめて毎年100億円前後の税金が投入されている事を肝に命じて、ゆめゆめ日本道路公団のようにならないようにお願いしたい。
【参照】
●日経IT Pro
-住基ネットが静かに本格稼働,ただし運用ミスでトラブルも 2003年8月26日
●Mainichi INTERACTIVE
■長野県、住基ネット離脱 田中知事「情報漏れの危険」 2003年8月15日
■住基ネットのウイルス対策「放置」 修正ソフト検証中 2003年8月19日
●地方自治情報センター
-住民基本台帳ネットワークシステム全国センター