先々週に放送されたNHKスペシャル、『中絶胎児利用の衝撃』は文字通り衝撃的だった。土曜日の本放送はナイター延長によるタイムシフトで25分遅れで半分しか録れず、月曜深夜の再放送を録り直しといて良かった。
NHKの番組広報ページには
今、最先端医療を担うバイオテクノロジーの世界で、胎児細胞に大きな注目が集まっている。分裂能力が旺盛で、神経や筋肉などさまざまな組織に分化する「幹細胞」が数多く含まれており、これを移植すれば、患者の損傷した組織を再生できるのである。と書かれている。確かに胎児細胞を移植すれば対処療法では治癒できない難病や障害も克服できる可能性はあると思う。また移植を望む患者さんの藁にもすがる気持ちも理解できるし、できることなら移植を受けさせてあげたい気持ちもある。ただ、ともすれば金持ちのエゴイスティックな若返り治療や胎児売買に繋がる恐れも多分にあり、やみくもに認めるべきではないとは思う。
ちなみにこの番組が問題視していた事は、厚生労働省の専門委員会が膠着し結論を先延ばしした状態が続いている事だ。言うまでもなく中絶治療の是非とも相まって倫理的にも非常にナーバスな問題であり、一朝一夕に結論を導き出す事が困難な難問だが、早急に国としての見解をまとめる必要がある。ガイドラインを策定して臨床研究を進めるのか、研究も含めてヒトの幹細胞を利用する一切の医療行為を禁止するなりしないと現実が先走ってしまう危険性があり、現に中国では移植治療が受けられるそうだし。
行政の不作為は伝統芸か。
【参照】
●再生医療の実現化プロジェクト http://www.stemcellproject.jp/
●日本せきずい基金 http://www.jscf.org/
┗神経再生研究における胎児組織利用に関する見解 2005年4月5日