アップルが新しいプロモーションMacをはじめようを始めた。特に11. ウイルスの悩みを解消。が挑戦的。
Mac OS Xは優れたUNIX基盤と他のパソコンを凌ぐセキュリティ機能により、ウイルスに感染する心配はありません。Mac の場合はドアを閉めて鍵を掛け、キーを隠し、あなたしかわからない暗証番号で貴重品を金庫に保管できます。と、かなり乱暴。
Macをはじめよう - TV CMより |
テレビCMも大々的に流されているが、Windows環境にウィルスが多い事を結構強烈に皮肉った大胆な内容だ。方やOS XはUNIXをベースとしていて堅牢だとアピールしているが、UNIXと言えどもウィルスの類が無い訳ではないし、Windows程ではないとしてもカーネルアップデートやセキュリティ修正プログラムが時々リリースされているのはUNIX/Linux系関係者ならば誰しもが知るところだ。
そもそも、WindowsだろうがUNIXだろうが基本的にウィルスを作る為に必要なコスト(技術力や手間)はほとんど差が無く、稼動台数が圧倒的に多いWindowsの方が費用対効果が高いから狙われ易いだけ、という実情を理解しておかなくてはならない。
これまではモトローラ系のPower PCを搭載し、命令コードが異なるという大きな壁があったMac。今年からWindows系でお馴染みIntelのCore CPUを搭載し、一番大きな壁を自ら取り除いた事を忘れてしまったのだろうか?
現在はWindowsよりも安全と言うだけであり、これからもそうだとは限らない。Macならウイルス対策は不要だという間違った認識を広めてしまうのはあまりにも危険過ぎる。
このCMで思い出したのが、10月に明らかになったばかりの「一部の Video iPod にWindowsウイルスが混入した事件」。この声名が「原因をWindowsのせいにするのは問題のすり替えだと非難された」のだが、今日改めて見たら
また現在出荷されている Video iPod はウイルスの影響はありません。Windows がこのようなウイルスに対して脆弱であること、それ以上にアップルが出荷前に問題を把握できなかったことを大変遺憾に思います。となっており、当時は無かった「それ以上にアップルが出荷前に問題を把握できなかったこと」という文言が明らかに後追いで追加されていた。
文言的には「それ以上に」という一言こそあるが、先に「Windowsが脆弱である事」を非難して「自社の品質管理が不十分だった事」への批判を逸らそうという態度は変っておらず、謙虚にユーザーの方を向いてきた(と思っていた)これまでのアップルからは考えられなかった事だ。
また喧嘩を売っていたずらにウィルス作者を刺激しようとしているとしか思えない愚行が特に気になる。彼らは横柄な会社や経営者を嫌ってターゲットにする性質があるので、下手をするとヤブヘビとなって新しいIntel系Macユーザーを窮地に追い込み兼ねない危険があると思うのだが。
このようなアップルの最近の行動は失望どころかある種の反感すら感じさせるものであり、誠に残念。好調な業績に浮かれて企業姿勢が緩んできたのだとしたら、敬虔なMac信者の忠誠もついに揺らぐのでは無いかと心配する。
【参照】
●アップル http://www.apple.com/jp/
┗Macをはじめよう
●日経ITPro http://itpro.nikkeibp.co.jp/
┗米Appleが「iPod」ウイルス混入事件で出した声明が非難の対象に 2006年10月23日