Topに戻る 序章, 丹波路, 道北篇, 道東篇, 道央篇, 終幕

北海道 2001夏

2001年8月8日(水)

早朝のオホーツク海(dscn0099.jpg)
5時48分 北海道紋別市、道の駅「オホーツク紋別」にて

目覚めたのは朝5時前。目を開けるとお世辞にも清潔とは言えない布団で雑魚寝状態。学生時代の合宿を髣髴とするある種の懐かしさがあり、そう悪くない風景である。

ここで起きたが百年目。他の人を起さぬように布団を上げ、着替えを済ませてこそこそ一階に降りる。本来ならば「立つ鳥後を濁さず」の如く掃除をして出るのがマナーなのだが、この時間だとそうも言ってられない。とは言え何もせず黙って旅立つのは忍びないので、せめて旅人ノートに惜別の言葉を残して朝靄の中へと旅立つ。

さらば、仲間達よ。またいつかどこかで逢おうぜ。

早朝の人気の無い紋別の街の外れにある道の駅「オホーツク紋別」で洗顔休憩。やっとスッキリした....が、雲に覆われている空を見上げて、ちょっとどんより気分。

しかし、程なくすっきり爽やかな青空に包まれると、ゴキゲン急上昇。しかも6時15分に積算50000kmを突破。場所的にはコムケ湖を過ぎたあたりで特にどうって事ない北海道の風景だった。う〜ん、期待し過ぎか?

サロマ原生花園に魅かれつつもおとなしくR238をつき進み、上湧別町へ。

静かなサロマ湖(dscn0102.jpg)
7時04分 北海道佐呂間町、サロマ湖にて

道すがら「カニ」「ホタテ」の看板や旗が目立ち始めるが、いかんせんまだ7時。悲しいかな、魚市場でもなければ開いていようハズも無い時間である。

ダメ元で道の駅「サロマ湖」に足を止めてみるが予想通り無駄なあがきで終わり、R238をトボトボと走る。ホタテ〜(;_;)

そんな気持ちとは無縁に、サロマ湖は極めて静かな湖面をたたえている。風も無く実に静かで穏やかな朝であった。

7時20分常呂町セイコーマートで朝食休憩。日は高くなってきたが気温はそれほど上がってないように感じる。電子レンジでチンしてもらったコロッケパンの暖かさが絶妙で、ホテルのバイキング朝食なんて比較にならないほどに美味である。

先客のVTZ氏を見送った後、おもむろに「ツーリングGO!GO!」の付録地図(ツーリングマップルの縮尺では見渡せる範囲が狭いので)を拡げる。今日の最重要ポイントは日本最東端の納沙布岬なんだが、予想以上に早起きしたので美幌峠を経て摩周湖へ寄り道する事を決めた。

だって、どう考えても知床の方は寒そうなんだもん。

美幌越え

霧に煙る屈斜路湖を見下ろす(dscn0105.jpg)
9時03分 北海道美幌町、美幌峠にて

7時半を過ぎたところでスタート。ゴキゲンな青空の下、常呂川に沿って道道7号線道道308号線を快調に飛ばし、端野町R39に合流し左折。

美幌の街中でR243にスイッチした後はアクセル全開。標高490mの美幌峠まで豪快なヒルクライムを楽しむ!!

…つもりだったが、標高が100mを越えるあたりからガスに囲まれ始め、寒さの為にペースダウンを余儀なくされる。美幌峠まで10分足らずであったが、駐車場にバイクを駐めるやいなやトイレに駆け込み、ため息を一つつく....。おわぁ〜、息が白いじゃないか!!

レストハウスと茹でトウモロコシの温かさが心に染みた。

ひとしきり落ち着いたところで展望台へ。風に吹かれて少しガスが晴れて来たようだが、今度は風が冷たくて寒い。じっとしていると震えが来るのでウロウロしていると我ながら挙動不審な気がするので、写真を適当に撮った後は急ぎ足で暖かいレストハウスに戻る。

期待の展望もイマイチでガックリと落ち込んだテンションの復活を目論み、早々に温泉を目指して峠を下る。

霧の摩周湖

温泉越しに屈斜路湖を望む(dscn0108.jpg)
10時16分 北海道弟子屈町、コタン温泉にて

屈斜路湖畔には露天風呂がいくつかあるので、寒さも何のそのとR263をゴキゲンに駆け下り、まずは最寄りの和琴温泉へ。入浴客が誰も居ないのはある意味良いのだが、遊歩道に面していながら目隠しになるようなものも一切無くハイカーや釣り客などの周囲の方が賑やかでのんびり入ってられる雰囲気では無かったのでパス。

そういうわけで、5分ほど走ってコタン温泉へ。先客が数人いて多少窮屈な感じはしたものの、まぁそのうち空くだろうと入浴決定。案の定入れ替わりに数人が上がってシメシメと思ってたら、今度は関西系の賑やかな親族一同が大挙して襲来。屈斜路湖を眺めながら一人物思いに耽る…とは程遠い雰囲気に嫌気がさす。

いつ降り出してもおかしくないほど薄暗くなった空模様も気になるので、結局10分ほど温まったところで離脱。ちょっと欲求不満を抱えたまま道道52号線摩周湖へと向かう。

久住山系の三俣山を髣髴とさせる硫黄山の脇を抜け、R391を南に向かったところで事件発生。1km程で左に別れる道道52号線を見失って、10km以上もルートを逸脱してしまう....。下り坂の空模様の中で30分近くのタイムロスは痛い。

第3駐車場のバス停(dscn0111.jpg)
11時17分 北海道弟子屈町、霧の摩周湖にて

道道52号線に戻って裏摩周の第3展望台に駆け上がる。が、標高600m以上の第3展望台は霧の中。まさしく霧の摩周湖をイヤになる程堪能する。

ちなみに「未婚者が霧のかからない摩周湖を見ると婚期が遅れる」と言われるが、もう今さら遅いとか早いとかどうでもいい話である。

いちお湖面が見ない事を確認して、11時20分無駄足で遅れた分を取り返すべく早々にリスタート。賑わっている第一展望台を横目に、霧でウェットコンディションの道道52号線をダラダラと下る。

摂氏12℃を指していた気温表示が15℃まで上がったところで、進行方向右側にミルクハウスを発見。確か『ジパングツーリング』に載ってたライダーハウスだ。早めに昼ご飯でも…と思ったが、取り敢えず温かい牛乳だけにしとく。一息入れて、寒い寒いと愚痴をこぼしつつまたCBに跨がり、11時40分路上をさすらう民となる。

山から降りて寒さはそれほどでもなくなったが、相変わらずどんよりどんよりとして今にも泣き出しそうな空の下、ちょっとブルーが入りつつ別海町へと向かう。R243を走っていると開陽台の案内板が目に入り始めるが、どうせ天気は悪いし真っ直ぐな道ももう珍しく思わなくなってきたところ。何より雨が降り出す前に距離を稼いでおきたいので、ここはおとなしく根室に向かう事にする。

酪農生産日本一の別海町ではR243ミルクロードと呼ばれる。沿道には広大な根釧原野の草原シーンが広がり、少ない家がさらに少なくなる。いわゆる人口より牛の数の方が多いって感じやね。しかし、スタンドやコンビニが無いのはともかく、数kmに及んで自販機すら無いのにはちょっと驚いた。対向車も含めて交通量が非常に少ないんで、販売効率を考えれば牛が缶コーヒーを買うようにならない限り無理ない話ではあるのだが、こんなとこに住んだ日には一発で飢え死にしてしまいそうだ....。昼メシも喰ってないし、あぁ腹減った。

ひたすら平坦で真っ直ぐなミルクロードを淡々と走る。進路を南へと変えると左手に広大な雪印乳業の別海工場が見える。ちょっと見学していこうかな?と思ったが予約が必要との事なので今回はパス。やっとの思いで根室市に入り、厚床からはR44で再び東へと向かう。

本土最東端へ

本土最東端の碑(dscn0117.jpg)
14時22分 北海道根室市、納沙布岬にて

風蓮湖の脇を抜けると久々にオホーツク海と再会。しかし、朝のそれと違って冬の日本海のように薄暗く寒々しい雰囲気にテンションダウン。しかし、根室市街地が近づくに連れてカニへの期待度と共にペースアップ。

温根沼大橋を渡って13時半カニ直売の看板が踊る根室市街地へ突入。しかし直売所は数多くあれど食べさせてくれそうなところはなかなか見当たらず、そのまま納沙布岬に向かう道道35号線に抜けてしまう。

こうなれば本土最東端納沙布岬でカニ喰ったるで!と俄然気合が入るが、さすがにここにきてクルマも多くなり久々に隊列に組み込まれてしまう。普段ならば「トロトロ走りやがって!」となるスピードでも、本土最東端まであと僅かの今となってはアプローチを楽しむ大らかさで笑って許す。

13時50分、遂に本土最東端納沙布岬に到達〜。まずは北方館を一回りして北方領土の経緯を再確認。「なるほど返してくれるもんなら返してもらわんと」というわけで返還要求署名に記帳する。どうもはるか離れた九州に住んでいるせいか北方領土問題に対しては一歩引いた感じになってしまったのだが、こうして歯舞群島が見える場所に立つと改めて考えさせられる。

土産屋を冷やかしながらカニ系のメニューを物色するが、この期に及んでもなんとなく魅かれるものが無い。そういえばカニといえば冬の味覚。という事は8月はどう転んでもシーズンオフに決まっている。という事実に気付いて、あっけなくカニ丼を見送った。

しかし、土地柄か?たまたまか?右翼の街宣車が大挙して押し寄せている。特に威圧されている訳ではないんだけどどうも団体に囲まれると落ち着かないので、14時半にリスタートする。腹は減ったが、もうピークはとっくに過ぎてどうでも良くなった....f(^^;;

再び根室市街地を抜けてR44を今度は西へと走る。厚床を過ぎて釧路を目指すが、さすがに朝5時から走ってるんで単調なコースでは眠気が襲ってくるようになり、15時茶内パーキングで小休止する。釧路までの道程は思ったより遠そうだ....

先客のSpeedStar氏とどちらともなく話し掛ける。が、開口一番出てくるのは「寒いですねぇ」だ。しかも彼はここに至る途中でブーツカバーを落してしまったそうだが、「まぁ降ったら降ったでなんとかなるでしょう」と至って陽気に言葉を続ける。相変わらず泣き出しそうな曇天に気持ちも下降傾向の中で、同じ境遇の仲間がいると思うだけで嬉しくまた心強く感じるのは不思議だ。SpeedStar氏を見送って暫くしてリスタート。さぁ釧路まであとひとっ走りだ。

悲喜交々

ぶ、ぶ、豚丼(dscn0118.jpg)
18時06分 北海道白糠町、道の駅「しらぬか恋問」にて

16時半頃釧路市内に入ったところで、デジカメ用にアルカリ乾電池を購入。と、ここでPHSに「メッセージあり」の表示あり。客先に於いてワームのCode Redが騒ぎになっていると聞いて電話で対応。う〜む、仕事で作ったソフトとは直接関係ないんだが、かといって放って置くこともできないし厄介な時代になってきたな....。結局20分程足止めを喰らう。

釧路からはR38をまっすぐ西へ。20分ほどで道の駅「しらぬか恋問」に到着。楽しみにしていた名物の豚丼にありつく。

豚丼と言えば言わずと知れた帯広ぱんちょうが有名だが、かなり行列に並ぶというし今回は帯広まで足を延ばすのは無理なので、『ジパングツーリング』でも紹介されていたむーんらいと豚丼(\900)を狙っていたのであった。

炭火で焼いた(と書いている)肉厚で柔らかい豚ロースと甘辛いタレが絶妙に絡んで確かにウマい。肉もご飯の上だけでなく中にももう一段ありボリュームもたっぷり。朝からひもじい思いをしてきたが、我慢して良かったなぁと思わせる逸品であった。

食べ終わって外を眺めると、靄なのか霧雨なのか微妙な感じでかなり薄暗くクルマもライトを点けて走っていた。18時半満腹感と共に再びCBに跨がり、R38の流れに任せて西へ走らせる。シールドにすぐ霧雨の水滴が付着して手でワイピングしながらなのでさすがに走りづらいが、あと10分程の辛抱だ。

目的地の白糠の街中に入り今宵の宿M&Pを探すが何往復しても見つからない。ガソリンスタンドで聞いても、駅前で客待ちしているタクシーの運転手に聞いても知らないと言われ、途方に暮れる.....。至福の一時から一転して窮地に追い込まれ、大ピンチ。

夜の帳と霧雨で幻想的なR38(dscn0120.jpg)
18時26分 北海道白糠町、道の駅「しらぬか恋問」にて

もう一度『ツーリングGOGO』の地図を確認するが、やはり白糠の駅周辺で間違い無い。釧路で電話したのにおかし〜な〜と思ってM&Pに再度電話するが、今度は全く繋がらなかった。

まったく狐につままれたような思いでM&Pを諦め、タクシーの運転手に教えてもらったライダーハウスを探す為にR392へ入る。すると2kmも走らないうちに人家も無く真っ暗闇になってしまったので、結局引き返す。霧雨もいつしか本格的な雨粒へと変っていて、文字通りの「泣きっ面に蜂」状態である。

再び街中まで戻り、『ツーリングGOGO』の地図を頼りにやはり白糠にあるというミッキーハウスに電話。すぐに威勢のいいおばちゃんが出て、これからでも泊れるという回答をもらってひと安心する。が、白糠駅近くにいる事を告げると「じゃあと30分くらいだねぇ」と言う。どうやら地図の位置がズレているようで思ったより遠そうだが、2つ先の駅を過ぎたところのR38左手のラーメン屋だというのでわかり易いだろう。

すでに中途半端に濡れてしまった為に合羽を着る事もできず、夜の霧雨という最悪のコンディションの中、街灯どころか店の看板すらない真っ暗なR38を走る。シールドを閉めると外側に張りつく細かい水滴と内側の曇りで全く見えず、かといって全開にするとメガネが濡れて同じ事。風に巻き上げられる水煙が更に視界を悪くする。この世の苦難がすべて襲いかかって来たかのような苦悩を抱えながら、40km/hに満たない程度でトロトロと走る。このあたり駅といってもきらびやかな駅前商店街があるわけでも無く、駅をいくつ過ぎたか、しまいにはどのあたりを走っているのかさえもわからなくなった。

音別町に入ってから30分を過ぎようとしていた事もあって「行き過ぎちゃったかな?」と不安に襲われ始めた頃、前方に停車中のバイク2台を発見。話を聞くと彼らもライダーハウスを探しているようだ。しかも彼らのターゲットはYANOが諦めたM&Pで、しかも言う事に事欠いてミッキーハウスとは隣同士のような距離らしいという。そういうわけで、3台連なってライダーハウスを探しながら暗闇のR38をトロトロ走るが、やはり仲間がいると心強い。それから1分も走ると浦幌町に入り、間もなく電気の消えたラーメンドライブインを発見。ずぶ濡れの3人の間に安堵の空気が広がった事は言うまでもない。

彼らも結局風呂のあるミッキーハウスに決め、駐車場にバイクを並べていると更に1台のバイクが一旦通り過ぎたあと戻って来た。やはりこの状況での走行は危険だと判断して、急遽宿泊を決めたそうだ。まずはしっとりと濡れて冷えた体を風呂で温めて生き返る。この夜は富山から自走してきたという若者Balius君と同部屋で、30分程話をしていたがさすがにお互いに疲れていたために程なく沈没する。明朝には雨も上がっている事を祈って....

『ツーリングGOGO』の地図が間違ってさえいなければすんなり来れたはずなので、こんなえらい目にも遭わなくて済んでいたであろうが、これはこれで今回のツーリングで一番思い出深いエピソードにもなったとも言えよう。まぁ雑誌の地図や記事を鵜呑みにしてはいかん(ちゃんと『ツーリングマップル』も併用するように)という事でもある。

食事処&ライダーハウス ミッキーハウス 1泊(風呂,布団付き)\1,200
北海道十勝郡浦幌町字直別 TEL.01557-8-2236 ツーリングマップル北海道 P.26-F2

本日の走行距離 597km

撮影:NIKON COOLPIX 800

明日への扉


Copyright (c) 2001 by Yoshihisa Yano
All rights reserved.