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北海道 2001夏

2001年8月5日(日)

神戸上陸

朝5時半に目覚める。デッキに出るとゴキゲンな天気の下、心地好い潮風が頬を撫でる。しばし気だるい朝のまったりした時間を過ごした後は、気合を入れて出動準備にかかる。今日は関西ツーリングマップルをウエストバッグに装填。

デッキからPHSで迷惑メール(ここから迷惑メールマガジンの発行が始まった)を送り付けたりしてるうち、神戸六甲アイランドに入港。車輌甲板までの長い階段を降りてCBとご対面。シートバッグを再びリアシートに積み、銀マットとシュラフをショックコードで固定して準備完了。

6時40分頃、2年振りの神戸の街に飛び出す。日曜日の早朝、クルマの少ないR2を東へ。しかし何時まで経っても「見覚えのある風景」が現れて来ない....。おっかしぃなぁ〜、と思いながらも走り続け芦屋市との境界で停止。ツーリングマップルをよ〜く確認するとあろうことか逆方向であった。情けない事に基点の六甲アイランドポートアイランドと勘違いしていたというワケである。

さっそくUターンして今度は西へ。石屋川を渡ったところで六甲山の案内板に従い右折。県道95号線に入るとところどころに見覚えのある風景が現れ始めると、ちょっと安心して急勾配を駆け登る。一発気合入れ!とアクセルを開けようとしたが、せっかくの北海道行きを前にケチが付くような事はしたくないので自制する。7時前六甲山トンネルを抜けると、ラブホテルの立ち並ぶ裏六甲を駆け降りる。満員ランプの並ぶ様に日曜の朝である事を再確認しつつ、そのまま六甲北道路に入り三田までの快走区間を一気走り。

ちょっと不安な雲行き(dscn0006.jpg)
8時43分 兵庫県青垣町、道の駅 あおがきにて

六甲山トンネル \50
六甲北道路 \250

2年前の北陸遠征ではここから中国・舞鶴道へと入ったが、今回はひとまず城崎温泉を目指してのんびりなので県道へ。県道720号線から県道141号線に繋いで7時半相野のファミリーマートで最初の休憩。ちょっとお腹も空いてるし、パンでも食べようかな?と思ったんだが、早くも後続のライダーからピースの洗礼を受け俄然ツーリング気分が盛上がる。結局、何も買わずに家から持ってきた水筒のお茶一杯だけで、再びゴキゲンな天気の下で爽やかなRidingに身を委ねる。

今田町からR372を経てR176を北上。8時を過ぎてそろそろ暑くなってくるかと思いきや、北上するとともに雲が出始めて覚悟したほどは暑くない。柏原町からは県道7号線に入り和田山を目指す。

8時40分青垣町の道の駅「あおがき」でトイレ休憩。暑くないのはいいのだが、ちょっと進行方向の雲行きが怪しく不安を抱きながら、リスタート。

R427に入り、有料の遠阪トンネル遠阪峠への分岐を過ぎたところでついに雨が落ちてきた。空はまだ明るく雨脚もそれほど強くないので、取り敢えず峠だけだろうと読んでシュラフだけビニール袋に入れて峠越え。峠付近で遅いクルマに追い付いてしまったので何気に追い越そうとしたところ、既に後ろから追い越しをかけているMIRA-XXが右側にいてヒヤリとする。こんな山道でゴボウ抜きするかぁ....(--;;。

峠を降りると予想通り薄日の射すドライコンディションに戻り、にんまり。ではシュラフのビニール袋も外すかな?と立ち止まってシールドを開くと何やら部品が落ちた....。プリオープナーのネジが緩んでいたようだ。慌てて部品を回収ししっかりネジ留め。ついでにシールドベースのネジも増し締めする。些細な事ではあるがどうも今日はついてないような気がするので、万全を期してシュラフはビニール袋に入れたままにしておいた方が良さそうだ。

R9に出たところで更に雲行きが悪くなり、福知山方向からも雲は流れてきているが、和田山方向は既に降っているような気配。しばらく熟慮した結果、不本意ながら出石蕎麦城崎温泉を断念して舞鶴に直行する事に決め、R9福知山方向に向かう。ところが舞鶴方向からどんどん雲が流れてくるものの、福知山市に入ると青空が広がるようになってきた。そこでR426へとステアリングを切り、遠回りになってしまったが再び出石蕎麦城崎温泉を目指す。

城崎にて

不安になるほど交通量の少ないR426をゴキゲンに快走。だんだん雲も少なくなり、10時過ぎ出石町に入る頃にはピーカンの夏空が広がってきた。出石と言えば出石蕎麦なんだが、昼メシにはまだ早いので蕎麦屋をチェックしつつ通過。快適なスピードの快楽に見を委ねる。

真夏の陽射しは容赦無く暑いものの、ツーリング気分満点ののどかな田園風景が広がる円山川沿いの風は絶妙に心地好く、シールドを開けると懐かしい夏草の匂いがした。

城崎風情(dscn0008.jpg)
11時36分 兵庫県城崎町、城崎温泉にて

程なく豊岡市を抜けて、11時に最初の目的地城崎温泉に到着。しかし思ったより観光客が多い。まぁ海水浴シーズンでもあるし、しょうが無いか。

一番奥まった共同湯、鴻の湯でひとっ風呂浴びる。施設はキレイでいちお露天風呂もある。が、露天風呂からの展望は全く効かずまさしく庭園風呂と言う表現は正鵠を射ていると言えよう。お湯も温めでのんびりでき、まぁそれなりに悪くないと言ったところか。

何より志賀直哉をはじめ、多くの文人に所縁の城崎は、大正ロマン溢れる街並みが売り物。温泉自体をとやかく言うのは野暮と言うモノだろう。

鴻の湯 \500 TEL.0796-32-3663(城崎温泉観光協会)

ひと汗流してサッパリしたんだが、やはり8月の陽射しは容赦無く射すように照りつけ、ちょっと動くと汗が噴き出す。水筒のお茶も飲み干してしまったので、ちょっとコンビニまで行くつもりでジャケットを腰に撒いてスタートする。が、コンビニ見つからず県道3号線に抜けてしまい、そのまま出石まで戻る事にする。

出石そば

ちょうど12時を過ぎたところで出石(いずし)に到着。どのお店にしようかと考えたが、取り敢えずツーリングマップルお薦めのそば処天通をセレクトした。

皿そば(dscn0010.jpg)
12時20分 兵庫県出石町、そば処天通にて

店内はそれなりに賑わっていて、2Fに案内された。注文はもちろん皿そば。一人前5皿がどれほどかわからなかったが、足りなかったら後から追加すればいいや、と中学生と思しきアルバイト女の子に取り敢えず一人前を頼む。本山葵を擦りながら、さてこの後はどうしようか?とツーリングマップルを10分ほど眺めていると、お待ちかねの蕎麦が登場。

皿一枚あたりわんこそば一杯分くらいかな?これじゃ少ないなぁと思いつつ、まずはストレートにツユで一枚。うむむ、ちょっとツユが辛くないかなぁ....。と思いつつ次は山葵を加えて一枚。ふむ。さてお次ぎはツユにとろろを加えて一枚。そして玉子を溶いて残り二枚を軽く平らげ、腕組みをして思案する。ボリューム的にも満足には程遠いが、かといってもっと食べたい程の蕎麦でもないかなぁ?というところで追加注文を躊躇していると、親族ご一行様と思しき騒々しいファミリーが入店したのでこれも頃合いと店を出る。レジで手作りの巾着袋を貰ったのが嬉しかった。

信州戸隠でもそうだったが、どうもYANOには蕎麦の味がなかなかHitしない。そもそも蕎麦は酒の肴として食べていたという事から、下戸のYANOの舌には合ないのかもしれない。

そば処天通 皿そば1人前 \800

素晴らしきミスコース

加悦の街を俯瞰(dscn0016.jpg)
13時50分 京都府加悦町、赤石林道にて

向かいの自販機でPETボトルのお茶を仕入れ、水筒に充填し準備万端。予想通り暑くなってきたので、標高833mの大江山で昼寝を目論んで12時50分にリスタートする。

R426から県道63号線にスイッチし、R176にぶつかったところで左折。アップダウンを快適に走り与謝トンネルを抜けると豪快に駆け下る....。あれ?なんで下るん?下ったらいかんやんと思いながらも、まぁ急ぐ旅でもないしとSL広場まで走ってしまう。が、特になんて事はない施設でちょっと期待外れ。いや、期待して行った訳ではないけれど....。

一息ついてからツーリングマップルを広げて現在位置を確認する。と、県道9号線に出るべきところで道を一本間違えている事に気が付いた....。しかも間違えたところから10km以上も走ってる。既に時計は13時半近くで真夏の陽射しが容赦無く照り付けているので、狙っていた大江山を諦め途中で見掛けた大江山憩いの広場という案内板を頼りに天上の世界に逃げる事にする。

しかし、赤石岳の中腹、標高500m程の大江山憩いの広場も涼しいのは涼しいが、YANO的に憩えるようなポイントが見当たらず、ちょっと戻って赤石林道の方へ入る。と、ここがまた思ってもみなかった絶景ポイント。傍らにパラグライダーのテイクオフ台もあり何人もの鳥人が空に舞っているが、実際に飛ばなくてもこうして鳥瞰図が楽しめるありがたい場所である。ミスコースさまさまといったところか。

鬼と神の共存共栄

鬼とCB(dscn0022.jpg)
15時18分 京都府大江町、県道9号線にて

さて日陰にバイクを駐めてお昼寝....。と思ったが、タイミングを逸したかいっこうに眠気を感じなくなってしまったので、30分程まったりしただけでリスタートする。

赤石林道を抜けると与謝トンネルの入口に出たのでそのままR176を戻り、当初の予定通り県道63号線を経て県道9号線に抜け、大江山に向かう。

大江町に入ると元伊勢という表記が現れる。実はお伊勢さんで知られる伊勢神宮は最初から三重県にあった訳ではなく、大江町にあったという事から地元では元伊勢と呼んで崇敬を集めているそうだ。大江町のWebサイトによると伊勢神宮にまつわる数多くの地名も現存しており由縁の信憑性は間違い無さそうである。

今回はそういう詳しい事は全く意識しなかった為ぞんざいにも通過してしまったが、いつか元伊勢と伊勢神宮を結ぶ旅をしてみたいと思う。

また大江町鬼伝説のある場所でもあり、鬼の里として町興しをしている。県道9号線の脇にはちょっとコミカルな鬼が立っていたりして道路を走っているだけでも楽しい。

うっかりガソリン残量が心細くなってしまった事もあり、結局目的地の大江山は登山口にて断念してしまったのだが、中腹の「日本の鬼の交流博物館」にはウルトラマンのデザインをした成田亨氏制作のブロンズ像があるという事をこのレポートを書いている途中に知り、せめてそこまでは行って観ておけば良かったと後悔しきり....。

県道9号線を快適なスピードで流し、程なく宮津市内へ。市街地でR178へと合流しいよいよ舞鶴へと向かう。が、最短距離で行っても面白くないので、栗田半島を周る県道605号線へと遠回り。が、さすがにシーズンだけあり海水浴客が多く、おとなしくR178で抜ければ良かったとちょっぴり後悔する。しかし奥には小ぢんまりとしたいい雰囲気の入り江なんかもあってのんびり探索するには良いルートである。

事件発生

夕映えの天橋立(dscn0027.jpg)
18時37分 京都府宮津市にて

16時20分栗田でトラクターと並んで給油(\106*15.2L)を済ませた後、R178に復帰。更にツーリングマップルで「夕映えの天橋立が美しい」と書かれた栗田峠へ足を延ばす。日没にはまだ時間があった事もあってそれほどの風景とは思えなかったが、せっかく立派な展望休憩所を作ったようなので一息入れてから再び舞鶴に向かった。

栗田湾を左に見ながらR178を快適に走るが、由良を過ぎて左に広がる風景が由良川に変わると、海水浴帰りの渋滞に巻き込まれてしまった....。(;_;)

時折ガードレールに膝を擦る文字通りのすり抜けを駆使して前へ前へと進み、7km先の信号でようやく渋滞とおさらばした。そしてR175に出たところで由良川を渡り舞鶴市街地へと入るとまた渋滞に遭遇するが、道幅が広いのでそれほど苦にならずに通過。しかし渋滞で見込みより大幅に遅れた17時45分舞鶴東港のフェリーターミナルに到着。とはいうものの肝心のフェリー出港は23時半とまだまだ余裕たっぷりなので難なく乗船手続きを済ませ、これで今日の予定はすべて終了!とひと安心。…したところで事件発覚。水筒を空にして補充しようと思ったが、なんとあるべきところに水筒が無いのである。

「しまった、落したか?」と思ったがそうやすやすと落ちるとも思えないので、置き忘れた可能性が極めて高い。落ち着いて思い起すと栗田峠の展望休憩所で飲んだ後、しまった記憶が無い....やってもうた〜。(;_;) まぁ別に水筒が無くてもツーリングには支障無いといえば無い。でもまだ18時だからホームセンターも開いている時間。反省の意味も込めて新しいのを買いに行くか!とも思ったが、よく考えると栗田峠取りに戻る時間もまたたっぷりある。あの大渋滞がさらに延びているとイヤだけど、旅の初日から何かを諦めてしまうのは幸先よろしくないので回収に向かうアグレッシブな決断をする。

フェリーと花火(dscn0036.jpg)
20時16分 京都府舞鶴市、前島埠頭にて

栗田峠まで20kmの道程を急いで、かつ安全運転で戻る。普通なら1時間で往復できる距離であるが、先ほどの大渋滞が気になる。しかし反対車線の渋滞がだいぶ縮小しているのを確認してひと安心。見込み通り30分程で栗田峠の展望休憩所に到着し、ベンチを見ると水筒がおとなしく待っていてくれた。やった〜。v(^^)

というわけで、無事水筒の回収作戦に成功。渋滞も解消したR178を意気揚々と快走し、19時には舞鶴市街地に戻る。吉野屋(並:\280)で夕食を、コンビニで買出しを済ませて再び前島埠頭のフェリーターミナルへ到着。

我がミスながら「やれやれ」である。

さすがに日没が迫ると乗船待ちのバイクがかなり増えていた。心地好い夜の潮風を浴びながら北へ向かう旅人同士で談笑を交わしていると、フェリーの向こうから大きな花火が上がり始めた。YANOの出発を祝ってくれているのかな?と思ったが、何の事はない「第26回みなと舞鶴ちゃったまつり花火大会」であった。

22時半頃から乗船開始。前のバイクがランプを登り切ったのに続いて、ゆっくり相棒のCBと共に北海道のエントランスを駆け登ってゆく。興奮のアプローチであった。

さっさとシートバックを下ろした後は、エスカレーターで客室フロアへ。案内所で寝台の割り当てを受けてベッドに荷物を卸したあとは、空いているうちに速攻で風呂にダッシュ。

一日の汗を流してサッパリしたところでのんびりデッキへ。夜風を浴びながら、蒸暑い日々を惜しむように一日を振り返る。今日一日だけでも幸/不幸いろいろあったが、終わり良ければすべて良し。楽しい一日であった。

新日本海フェリー 舞鶴フェリーターミナル TEL:0773-62-3000
2等寝台\9,490(燃料油価格変動調整金\270を含む)/二輪車(750cc未満)\6,970(燃料油価格変動調整金\150を含む)

本日の走行距離 約425km

2001年8月6日(月)

北へ

ファンネルと青空(dscn0046.jpg)
11時58分 ニューあかしあ船上にて

目覚めるとさっそくデッキに出る。ブラボーな青空にバイクで走れないのが勿体無い〜と思うと共に、予想より涼しい風に確実に北の大地に近づいている事を肌で感じる。

8時を過ぎたところでカフェテリア形式の食堂で朝食。オーシャンビューの割増しを考慮しても、冷めてる上にこの値段はちょっと高いなぁ〜と思う。せめてサラダバーでの大盛りとコーヒーのお代わりで一矢報いる。(笑)

食後は「ツーリングGO!GO!」「ツーリングマップル北海道」を抱えてフォワードサロンへ。ルートを検討しようと思っての事だったが、何をするでもなくぼんやりと海を眺めたりして過ごす。

ふと隣を見ると同じように地図やら雑誌やらを食い入るように眺める御仁がちらほら。話し掛けようかな?とも思ったが、邪魔しちゃ悪いのでおとなしくデッキを徘徊する。

国内のフェリーでは貴重な後方デッキのプールも賑わっていて、それなりにリゾート気分を盛り上げている。とはいえ、水着は持ってきてないのでTシャツを脱いでベンチに寝転がり日光浴と洒落る。たまには何もしない一日というのもいいものである。

日本海に沈む夕日(dscn0048.jpg)
18時44分 ニューあかしあ船上にて

しかしよく考えるとあれだけバイクを載せたからにゃかなりのライダーが乗っているはずなのに、連れと思しき2〜3人組がいる程度で、ありがちに大勢でたむろっている風景が殆ど見かけられない。

そういうYANO自身もウロウロしてライダーを見かけている割には、なぜか積極的に声をかけようという気がしないのであった。

『津軽海峡冬景色』で唄われたセンチメンタリズムではなかろうが、待ち焦がれる北の大地に思いを馳せ心を巡らせているのであろう。

日本海の水平線に浮かぶ、切ないほど美しい夕日が明日の好天を約束しているかのようであった。

北へと向かう旅人は寡黙である。

夕食を済ませて部屋に戻っていたら、ロビーのTVで「2001夏 長崎から さだまさし コンサート」が映っていた。そうか、今日は原爆祈念日か。思わず『長崎小夜曲』を一緒に口ずさむ。

'上りにするか、下りにするか、明日決めよう♪'

そういえば長崎もしばらく行ってないなぁ....と思ったが、北海道に向かっている最中になんで長崎に思いを馳せにゃならんのじゃと思い直し、長崎を背負ったさだまさしを捨てて部屋に戻る。でも、さだまさしって『北の国から』のテーマも唄ってるんだよな....

本日の走行距離 0 km

撮影:NIKON COOLPIX 800

明日への扉


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