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Last-modified: 2024-03-09 (土)


[一語一絵/IT系]

ダウンロード違法化 / 2019-02-15 (金)

静止画ダウンロード違法化の件。

著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定
[External]朝日新聞デジタル記事より

1月25日の[External]文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回)での[External]拡大方針まとまらずから一転、2月13日の[External]文化審議会著作権分科会(第53回)[External]「全面的に違法」方針決定されたと朝日新聞が報じ、各メディアが騒ぎ始めた。

実際のところ[External]文化審議会著作権分科会(第53回)の議事からポイントを拾うと

【田村委員】

 この共同意見書の趣旨は,今回広くダウンロード違法化を促進することに対する懸念です。今現在のところ違法になっていることが明らかな録音・録画と違って,一般の文書等の著作物というのは相対的に創作が容易ですので,権利者も多種多様となっております。その中には保護が必要な著作物ももちろんありますが,そうでないものも多数含まれ,特に権利者が何か保護を欲しているわけではないというものも多数含まれているように思います。その半面,録音・録画に比べて容量が小さいことが多いので,簡単にダウンロードできるということがありますので,過度に規制された場合に,人々の自由が録音・録画と違って相対的に大きく制約されるという特質性があると思います。
 そのような中で,立法事実として,確かに海賊版対策ということで,漫画等やソフトウエアなどの有償著作物については喫緊の課題であるということが再三示されておりまして,それは私も十分理解できます。しかし,その必要性は認めるとしても,それを超えて幅広く全ての著作物について今回の規制の拡大が必要である,そういうことを示す立法事実はいまだに示されていないように思います。
 先ほど研究目的の話もありましたけれども,例えば学術雑誌等に関しては,孤児著作物あるいはそうでないものも含め,過去に本誌掲載の全ての著作物を著作権者全員の許諾が得られていないにもかかわらず,DVD化し,ウェブ配信するということは通例行われておりまして,学生がそれをダウンロードしているというのも普通であります。こうしたものに対して,仮に主観的要件だけで規制を絞ろうとしましても,状況に詳しければ詳しいほどダウンロードができなくなりますが,そこまでしてダウンロード規制を拡大する必要性があるか,立法事実があるのかはやや疑問に思います。その結果,結論としては,有償著作物等の限定が必要であろうというのがこの共同意見の骨子です。
 この意見,連名8名です。26名いらっしゃる小委員会の委員の中での確かに少数ではありますが,全員が研究者でございまして,この8名のうち,生貝委員を除いては著作権法の専門家として通っている者です。ほかにも著作権法学者と目される者が小委員会にいらっしゃいますが,その中では,この連名ではありませんが,上野達弘委員もやはり限定案です。著作権法学者でこういった考え方に共同歩調を取っていないのは,あえて申し上げますと,主査の茶園委員と大渕委員だけということで,それなりの著作権法に詳しいと自称している者の間では,むしろこちらの見解の方が強いということはお踏まえいただければと思います。
 そして,今回このように我々が共同意見などを出したことを踏まえていただきまして,先ほどから御紹介があった報告書(案)も,例えば報告書本体,今回資料2-2ですと,77ページの3段落目の「しかしながら」辺りから78ページの2行目まで,これは民事規制です。それから,刑事罰に関しましても,80ページの3段落目,「この点」辺りから4段落目までということで,両論が,我々の意見も十分踏まえて複数人からというものが記されています。
 このように報告書のところで両論併記となっていることは,委員会の意見を十分反映していただいたもので,そうだといたしますと,拙速な立法化を避けて,より慎重な議論を期すべきではないかと思います。

 また,この報告書の後も,最近では,参議院の院内集会などで,漫画家自身からも,若者の間で広がっているスクリーンショットをむやみに抑止しかねないとか,漫画家やイラストレーターなどで,ウェブで気になったイラスト等をとりあえず,中には違法アップロードも含まれ得る可能性があることは認識しながら多数保存しておくという,一般的な創作活動をかえって阻害しかねないなどの反対の声が上がっておりまして,これに留意する必要もあるように思います。
とか
【森田委員】

 次に、先ほどから議論を伺っておりまして,録音・録画以外に対象を拡大するということについてはコンセンサスがあり、それから,早急な立法が必要であるということについてもコンセンサスがあるわけでありますが,いずれの考え方を採るかによって方向性が大きく異なってくるのは、きょうの2-1のペーパーの3頁もそうなのですが,事務局が報告書(案)で示した問題の立て方として,「問題の所在」としては,「幅広い分野の著作物について、海賊版による被害が生じている」というのが問題であるという立法事実を挙げながら,「検討結果」で対象を広げるときには,「未然防止の必要性」を挙げてきて,現時点で特に被害が顕在化・深刻化していないところについても,将来何か問題が生ずるかもしれないので,あらかじめ未然防止をするために対象を限定せずに拡大するという考え方が述べられていることです。
 このような考え方は,権利者の側からも強く主張されたわけでもありませんし,また,知財本部での議論も飽くまで海賊版対策であって,現に生じている被害に対して早急に対応してほしいということでありまして,これまでの議論の経緯を踏まえても、「未然防止の必要性」というのを強調されるのは適当でないように思います。報告書(案)では63~64頁や76頁でさらっと出てきていますが,きょうの2-1でもこれが大きく取り上げられていますので,この点に事務局の考え方が示されているとみることができそうです。そのような「未然防止の必要性」を強調して、既に被害が生じていない部分についても広く網を掛けるのだという立場に立てば,これは特に限定も付さず対象を一般化するということになるかもしれませんが,そのことに伴う様々な問題が指摘されているわけでありますから,余り未然防止の必要性を強調して立法に当たるのは適当でないように思います。
とか、というところか。

先月のCoinhiveの件でも書いたように、現実に警察当局の乱暴で雑な解釈による不当捜査がまかり通っているので、心配で心配で仕方がない。

[External]毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いが問題となっている厚生労働省が叩かれているが、文化庁ももっと丁寧に仕事をした方が良いよ。

【参照】
●朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/
「スクショ」違法に? DL違法化の拡大方針まとまらず 2019年1月25日
著作権侵害、スクショもNG 「全面的に違法」方針決定 2019年2月13日
●ITmedia NEWS https://www.itmedia.co.jp/news/
私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」に反対意見集まるが…… 埋まらぬ「権利者」vs.「ユーザー」の溝 2007年11月28日
私的録音録画小委員会:「ダウンロード違法化」不可避に 2007年12月18日
私的録音録画小委員会:反対意見多数でも「ダウンロード違法化」のなぜ 2007年12月18日
「ブロッキング法制化」反対派不在の報告会 「中間まとまらない」座長メモも公開 2018年10月30日
「静止画ダウンロード違法化」に反対 日本マンガ学会、「研究・創作を阻害する最悪の結果招く」 2019年1月24日
静止画ダウンロード違法化案「目的を見失っている」──情報法制研究所、懸念と改善案を提言 2019年2月8日
「誰が頼んだ」違法ダウンロード対象拡大、人気漫画家も懸念 2019年2月13日
「スクショもNG」で広がる混乱、合法と違法の線引きは? “違法ダウンロード対象拡大”の問題点 2019年2月14日
違法ダウンロード対象拡大の疑問に回答 漫画家の赤松健さんがAbemaTVで 2019年2月14日
電子書籍のスクショは合法? 実際に逮捕されるの? 弁護士が解説する「違法ダウンロードの対象拡大」 2019年2月15日
●文化庁 http://www.bunka.go.jp/
平成24年10月1日施行 違法ダウンロードの刑事罰化について
違法ダウンロードの刑事罰化についてのQ&A
文化審議会著作権分科会
文化審議会著作権分科会(第53回)(第18期第3回) 2019年2月13日
文化審議会著作権分科会 法制・基本問題小委員会
文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会(第8回) 2019年1月25日
[PDF]ダウンロード違法化の対象範囲の見直しに関する論点整理(案)[資料2]
[PDF]報告書(案)に対する意見書[参考資料9]
●厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/
毎月勤労統計調査において全数調査するとしていたところを一部抽出調査で行っていたことについて 2019年1月11日
毎月勤労統計調査に係る雇用保険、労災保険等の追加給付について 2019年1月11日
毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書について 2019年1月22日
毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)
●Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/
不正アクセス行為の禁止等に関する法律
不正指令電磁的記録に関する罪
ダウンロード違法化
サイバー犯罪対策室
パソコン遠隔操作事件
岡崎市立中央図書館事件