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知床旅情

2002年3月5日(火)

知床旅情/森繁久彌

ウトロ港を望む(dscn0192.jpg)
07:33 流氷接近!?@ウトロ港

顔の寒さで7時頃に目が覚める。まだ朝食まで1時間程時間があるので顔を洗ってカメラを片手に表に。旅の朝、恒例のお散歩である。ダラダラとTVを見て過ごすだけの日常生活からは信じられない行動と言えよう。

昨日はドライだった路面も昨夜の雪で真っ白になっているが、それほど続かなかったようだ。

この程度ならバスが出る頃にはキレイに溶けてしまうだろう。しかし、はるばる九州からやってきた立場からすると雪が少ないというのは残念。とは言うものの大雪で交通機関や行動に影響が出るようなら大ピンチ。そういう意味ではナイスバランスなイイ感じであるといえよう。

ウトロの通り(dscn0191.jpg)
07:29 ウトロの朝

歩道はガリガリ状態のアイスバーン。これはシリモチでもケガをするかもしれない。もはや骨董品と言っても過言ではないOM-1を手にして恐怖だ…と言いつつも、顔が笑っているのに気付く。へへっ、こりゃ楽しいぞ。

気になる流氷は?というと、ボンズホームの前からは海は見えない。そこで少しでも高いところへと、ウトロ温泉街への坂道を登っていく。1分も歩けば港が見渡せるようになった。接岸こそしていないが、流氷は昨日に比べるとかなり接近してきていた。

北からの風が続くようならばひょっとして昼頃には接岸するかも?

写真を撮りながらしばらく坂道をウロウロ。道路から外れたところに遊歩道っぽいところがあったので、ちょっと足を踏みこんだらズボッっとくるぶしあたりまで埋ってしまった。寒暖で凍ってしまう表面こそ固いが、数cm下はふかふかのパウダースノーだったのだ。うむむっ、恐るべしトラップである。

朝の通学風景(dscn0195.jpg)
07:45 通学風景@ウトロ

再びボンズホームに向かって下っていると、地元の女の子が「おはようございま〜す」と元気な声を掛けて足早に追い越していった。はやっ…。さすがジモティ、走り方も安定していて実に堂に入っている。お見事でした。

宿に戻ってTVで天気予報のチェック。どうやら青空も昼まで持たない模様。午前中にもう一度知床自然センターまで行ってみるか? しばし思案したが、欲張った時は結果が良くないのは世の常なので、今回は大人しく網走に戻っておーろら号に懸けてみることにした。

朝食はジャガイモのみそ汁が実に美味かった。朝から目一杯喰って満足のこころ。TakeOutで栗じゃがプリン(宿泊者は\100引きで\350)を貰って8時半にチェックアウト。なかなか居心地の良い、食事もウマい宿だった。

知床斜里行きのバスは9時25分発。まだ1時間近く時間があるので、今度はオーロラファンタジーの会場でもあったウトロ港まで散策する。

栗じゃがプリン(dscn0198.jpg)
09:23 栗じゃがプリン@ボンズホーム

知床グランドホテルの玄関から、加藤登紀子の知床旅情が絶え間なく流れている。元唄は森繁久彌だし、唄の舞台となった場所はウトロではなく反対側の羅臼なのだが、まぁ知床のイメージソングでもあるし旅情を誘うBGMとしては文句ないところ。

特に、知床を離れようとする今聴くのは、万感迫るものがある。

ここでウロウロしているとトラブル発生。実は昨夜のオーロラファンタジーから帰った時に靴底が踵から剥がれはじめていたのだが、ここにきて残すところ3分の1ほどになってしまった。つま先だけが辛うじてくっついている状態で、歩くとスリッパのようにペタッペタッっと音がするのが我ながらカワイイ…。だが、この状態で滑ってしまったりしては危険なので、オロンコ岩への登頂を断念して緊急修繕を決断する。

何しろここからバスで1時間缶詰。しかも車内は暖かいので接着環境としては理想的。近くには何ともおあつらえ向きにセイコーマートがあったので一つだけ残っていたアロンアルファを入手。砂漠にオアシス、北海道にセイコーマート。感謝感激、雨あられ。

恐る恐るバスターミナルまで歩いていき、接着作業終了。落ち着いたところで、栗じゃがプリンを食す。程よい甘さの裏側にジャガイモのザラザラした食感もしっかりあって、プリンといえばなめらかな舌ざわりという固定概念を覆すなかなか不思議な味わい。本来ならばオロンコ岩で流氷を眺めながら…といきたかったところだが致し方あるまい。欲を出すときりがなく、くよくよ憂いてばかりでも能がない。良くも悪くも現実を受け入れて楽しんでしまう、クレバーな寛容さが旅を楽しむ極意。人間万事塞翁が馬、を旨とすべし。

朝の通学風景(dscn0211.jpg)
09:48 日の出付近?

栗じゃがプリンを食べ終わったと同時にバス到着。慌ただしくかつ靴に衝撃を与えないようバスに乗り込み、海側の席を陣取る。

バスは定刻の9時25分に発車。R344知床斜里へ向けて淡々と走る。窓の外にはゆらゆらと流氷漂うオホーツク海が広がり、夢中でシャッターを切る。バスの窓越しでは色合いが変ったり、車内が写り込んだりして良くない。

もちろん止められるものならば止めて降りたいくらいだが、そこはバスの旅の宿命。この季節に窓を開けようものなら非難轟々だろうし、割り切って撮るしかないのだ。

この口惜しさはいつか晴らさねばならないだろう。

さらばウトロ。さらば知床。また会う日まで。

春よこい/松任谷由実

斜里市街地の風景(dscn0233.jpg)
10:27 知床斜里駅付近にて

知床斜里には定刻の10時20分に到着。とは言うものの、次の列車は11時26分の発車。しかし、慌てて網走に行く必要も無い事から、11時57分流氷ノロッコ号に乗車する事にする。

駅前をしばらく散策…と歩き回ったが、雪解けでビシャビシャなところを歩くのは意外と疲れる。面白そうな商店街もなさそうだし。

なわけで程なく駅に戻り、田舎の駅の待合室ならではのゆっくりとした時の流れに身を任せ、ぼんやりと過ごす。「何にもしない」をするのだ。

停車中の流氷ノロッコ号(dscn0237.jpg)
11:38 知床斜里駅にて

などと偉そうに言いつつ結局ウトウトf(^^;;していると、時折地元の人同士の会話が耳に入ってくる。何気なく聞いていると、やはり予想より早く流氷が離岸してしまった事で、海開けと春の到来が早くなりそうだという。やはり春が待ち遠しいのだろう。

それにしても見渡す限りお年寄りばかりだが、この路面が凍る季節の外出は過酷の一言に尽きるだろう。都会では何でもかんでもバリアフリーと言ってるし、札幌でも高齢者向けの雪対策を導入を検討しているという報道もあったが、最も大変なのはコンビニも無いような田舎に住んでるお年寄りではないかと思う。

しかし、いわゆる北海道弁が東北や鹿児島の言葉より理解しやすいのが何とも不思議なのだが....。

北浜駅外観(dscn0248.jpg)
10:27 北浜駅にて

そうこうしているうちに11時57分流氷ノロッコ号が発車。

昨日と違って車内はガラガラ。やはり団体客を相手にしないと商売にならない、という現実をまざまざと見せつけられた思いがした。

また車窓から流氷は全く見えず、流氷帯が遠ざかっている事を改めて確認する。この状況ではおーろら号も期待できそうにない。

元々は夕方のおーろら号で夕陽に輝く流氷を観てから都市間夜行バスで札幌に戻るつもりだったのだが、バスで通過とはいえ、せっかくなら明るいうちに石北峠層雲峡を観ておきたいので、14時の都市間バスドリーミントオホーツク号札幌に戻る事を決断する。

網走到着の直前にやっとPHSの圏内に入ったところで速やかに昼休み中の友人に電話を入れ、宿を確保してひと安心。

網走駅に定刻の12時55分到着。そこからバスターミナルまで5分ほど歩く。が、今日は暖かくて道路は水たまりだらけ。必然的にクルマは水しぶきを上げて走っていく事になり、周囲に注意を払いながらてくてく歩いていく。

どこかで昼メシを喰おうかと思ったが、適当なところがなく腹ぺこのままバスターミナルへ。朝たっぷり喰っておいて正解だった。全席予約制のドリーミントオホーツク号だが、予想どおり空席があり目論みどおりチケットを確保。

ドリーミントオホーツク号(dscn0252.jpg)
17:12 層雲峡にて

そして14時網走バスターミナルを発車。6時間の長旅が始まった。まずは車窓から網走湖を眺めながらセブンイレブンで仕入れた弁当で遅めのランチ。お腹が満たされたところでシートをリクライニングしてお昼寝。スリッパとフットレストもあって快適である。

15時15分北見停車で目覚める。市内では今を時めく鈴木宗男後援会の事務所を発見し、なるほどと妙に納得する。

バスはひたすらR39を西へ。市街地を抜けると両側には北海道らしい広大な畑が広がるが、意外にPHSの圏内。お〜R39沿道は違うか!と思いきや、温根湯までの短い命だった。(笑)

16時を過ぎると車窓は次第に山深い風景に変り、YANOを歓迎するかのように雪まで舞い始めた。ほどなく路面も真っ白に変り、勾配とカーブも厳しくなって石北峠の区間に入った事を示していた。バイクで走るなら面白そうだなぁ…と思ったが、いつまで続くんだ?というほどの長さはバスだと乗っているだけでウンザリする....。

吹雪の石北峠(標高1040m)を越え、17時10分層雲峡に到着。降り続く雪も相まって幻想的な雰囲気を漂わせている場所だが、九州人に言わせるとスケールの大きな耶馬溪というところか?紅葉のシーズンが一番良さそうだ。

残念ながら賑わっている温泉街とは遠く離れたドライブインである為に「氷爆まつり」は車窓から幻想的な雰囲気を垣間観るだけだったが、3時間ぶりに降りた車外はまだまだ厳冬の風景だ。トイレを済ませた後、ちょっとカメラを片手にウロウロしてみたが寒い寒い。すぐに車内に戻った。

時計台外観(dscn0256.jpg)
20:04 札幌時計台にて

17時20分に発車すると間もなく夜の帳がバスを包み込み始める。薄暗くなった窓の外で降り止まない雪と、思い出したように流れ去る民家の灯が、なぜか感傷的な雰囲気にさせる。

平坦になってしばらく走ったところで事故が発生。追突か?路側帯に積み上げられた雪にまでクルマがツッコんで、対向車線を塞いでいた。幸いそれほど大きな事故には至ってない模様だが、この雪では無理もあるまいて。車外に出て携帯電話で110番している男性が実に悲しそうだった。

旭川北ICから道央自動車道へ。ここまで来れば札幌まであと少し。怠惰な空気で満たされた車内ではビデオのモニターがフラッシュライトのように視覚を刺激するだけ。明日はどこへ行こうか?来月はどこへ行こうか?来年はどこで何をしているだろうか? いろんな思いを巡らせた6時間のバスの旅だった。

20時時計台前に到着。さすがにじっとしているのは疲れた....。3回目の渡道にして初めて観る時計台を遠くからぼんやり眺めながら、ひと休み。しかしひっきりなしに観光客がやってくるのを観ているのもなかなか面白い。

その後は札幌駅までダラダラと歩き、ヨドバシカメラで掲示板に書き込みした後、20時38分発のいしかりライナー江別駅に戻って友人と合流。ガストで軽い晩メシを摂った後は、勝手知ったる他人の我が家へ。またしてもご厄介になります。m(__)m

本日の移動距離 440.0 km

撮影:NIKON COOLPIX 800

明日への扉


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