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知床旅情

2002年3月3日(日)

白い恋人達/桑田佳祐

終着駅、稚内に到着!!(dscn0046.jpg)
06:02 稚内駅に到着した利尻

5時半に車内放送で起される。さすがに寝付くのが遅かった事もあって寝覚め爽やかとはいかないが、洗面所で顔を洗ってすこしスッキリ。

薄明るくなった窓の外は荒涼としたサロベツ原野っぽい風景。薄日も差して雪は降っていないが、枯れ草が風に揺れて見るからに寒々しい印象だ…。

定刻の6時に終着駅稚内に到着。言わずと知れた日本最北端の街、稚内のこの日の最低気温は-7.2℃。ホームに降り立つと凛とした厳冬(九州だと)の空気が出迎えてくれた。

取り敢えずは多少興奮状態なのであちこち写真を撮って周ったり活発に動き回っていたが、寒さと空腹感から電池切れ状態に陥る。

で、構内の立喰いソバで体内から温める。そういえば夜汽車で終着駅に着いたら「まずは立喰いソバを一杯」というのが切っても切れないお約束だったなぁ。この味も何年ぶりだろう?

稚内の朝(dscn0057.jpg)
06:46 稚内駅前の朝模様

街の蕎麦屋でこれを出された日には「商売する気あるんかい?」と苦言を呈せずにはおれないような代物だが、なぜか駅の立ち喰いだとウマいと思ってしまうシチュエーションの妙。

それも最果ての立喰いソバなら尚の事、Viva 立喰いソバである。

さて稚内から先はオホーツク海沿い紋別まで5時間かけて行くバスのポールスター号だ。お腹も落ち着いたところで徒歩1分の稚内バスターミナルに行って難無くチケットを購入。ついでにダメ元で流氷の状態を聞いてみたが、案の定全くわからないと言う....。何しろ2月25日から流氷が離岸してしまったのだ。う〜ん、不安。

ポールスター号の出発時刻は8時。ということはまだ1時間半ほど余裕があるので、暇潰しがてら500mほど離れたセイコーマートまで買出しを兼ねて散策する。なにしろ枝幸まで5時間のバスの旅である。と思ったが、結局PETボトルのお茶とのど飴、そしてすぐに飲む缶コーヒーを買っただけだった。

北防波堤ドーム(dscn0061.jpg)
07:12 稚内北防波堤ドームにて

朝の気だるさが漂う稚内の街の写真をちょこちょこ撮りながらのんびり折り返したが、それでもまだ時計は7時。折角だから観光でもしとくかというわけで、歩いて10分ほどの北防波堤ドームまで足を延ばす。北防波堤ドームはこれで3度目だが、何しろ雪景色は最初で最後かもしれないのだ!?

しかしアイスバーンとなった歩道をおっかなびっくり歩いていると、股関節あたりに筋肉痛っぽい妙な違和感がある。昨夜の札幌散策による疲労も含めて、こんなところに力が入ってるんだなぁと感心する。

程なく雪化粧した北防波堤ドームが見える。やっぱりこの雰囲気が情緒があっていいな。ウロウロしながら数カット写真を撮ったところで切り上げる。

少し冷えたのかちょっと用を催して来たが、バスターミナルのお手洗いがちょっとボロっちかったのを思い出し、途中の稚内全日空ホテルでお手洗いだけちょいと拝借。f(^^;;

ついでに静かなロビーからガリンコ観光汽船に電話し、流氷の状態を聞いてみた…

が、いかにも申し訳なさそうに「今日もだいぶ離れており、乗船されてもご覧頂けないと思いますm(__)m」という答えだったのでガリンコ号の予約は見送り、網走まで直行してしまう事にする。

とはいえ、網走でも見られるという保証も全く無いのであるが。

なわけで、失意のまま稚内バスターミナルに戻り、黙ってポールスター号に乗り込む。

宗谷バスポールスター号は10人ほどの乗客を乗せ定刻の8時に発車。まずは日本最北端の宗谷岬へと旅人達を運ぶ。

間宮林蔵、樺太を望む(dscn0068.jpg)
08:48 最北端、宗谷岬にて

稚内の市街地を抜けR238に入る。左手に広がる雄大な宗谷湾越しには、宗谷岬に連なる雪を頂いた山が見える。都会で見るよりも広く透明感がある空は、少し雲があるものの概ね良好。もう雪も降らないのかなぁ?

しばらく行くと右手に稚内空港が見える。間違いなく昨夏にも走ったコースなんだけど、稚内空港を見た記憶は全く無い。例え同じ場所を走ったとしても、バスの旅ではまた違った風景が見えるという事か。

車内は熟年のご夫婦一組、大学生らしき男性ペア一組、そして残る5人ほどはひとり旅の雰囲気。皆それぞれ適度な距離を保ち、それぞれの思いを胸に5時間の旅が始まった。

時折乗用車に追い越されながら、あくまでも淡々とバスは走る。ふと気が付いたら「まもなく宗谷岬」というアナウンス。いかん、うっかり眠ってしまったようだ。

いつしか空は分厚い雲で覆われていた。やっぱり雪の気配。

宗谷岬に佇むポールスター号(dscn0070.jpg)
08:51 宗谷岬で待つポールスター号

8時45分氷点下5℃宗谷岬に到着。停車時間が15分あるのでトイレ休憩も兼ねて車外へ降り、7ヶ月ぶりに日本最北端の岬に立ってみる。

昨夏と同じような天気で43km先の樺太は全く観えない。1年経たずに再訪するとは全く思ってなかったのだが、やはり雪の季節に観る風景はまた一段と感慨深いものがある。

土産物屋も軒並み閉まっているが、最北端食堂だけは営業中。この寒空の下でも頑張っているのである。

ポールスター号は再び旅人を乗せて、9時宗谷岬を出発。

大岬を過ぎると人気も全く無くなり、生活感の無い荒涼とした雪原とオホーツクの海原がただただ広がるだけの風景に変る。ここから浜鬼志別までの26.4 kmは定期路線バスが無い区間であり、言い替えればポールスター号の独壇場、一番の見どころでもあるのだ。

オギヨディオラ/リーチェ

雪原(dscn0074.jpg)
09:41 猿払村付近にて

いつの間にか雪が激しく降り始めた。流氷は気配すらみじんも感じさせないのが残念ではあるが、これぞオホーツクの原野という雰囲気は夏のそれより圧倒的に旅人の心に訴えかける。

と言うと寂しさの極致だと思うかもしれないが、そういうわけでもないのがちょっと不思議。それこそ穏やかなオホーツク海のなせる業なのかもしれない。

車内はバスのエンジン音と、時折すれ違ったり追い越していくクルマの音が聞こえる以外は、話し声も殆どせず極めて静か。しかし緊張感が漂っているわけではなく、あくまでもゆったりとまったりと時間が流れている感じで、ある意味非常に快適で居心地の良い空間が確立されている。

信号も無く風景も大して変わり映えせず、自分がハンドルを握っていたら間違いなく眠りに落ちてしまうだろう。そんなシチュエーションでも集中力を維持して運転を続けるドライバーに拍手。

吹雪いて看板もよく見えません(dscn0077.jpg)
10:40 吹雪の枝幸にて…

止んだかと思えば一転して猛吹雪。という移り気な天候を繰り返しながら、10時40分に吹雪の枝幸のバスターミナルに到着。宗谷バスはここで折り返しとなる為に、一旦下車して今度は紋別から来て折り返す北紋バスに乗り換えるのだ。

ここで30分程の待ち合わせ。昼食を摂るにはここしかない…と思ってたが、ファーストフードならばいざ知らずよく考えると30分という時間は実に微妙である。そこでバスターミナルの前にある西條という大きなスーパーで買出しする事にして、意を決して吹雪の中へと出動。

さっそくお惣菜コーナーなどを眺めてたら、お寿司の盛り合わせなど大物がどど〜んと並んでて大賑わい。ここで今日が「ひな祭り」という事を思い知る…。

なんてのほほんとしてるといつの間にやら周囲に見覚えのある顔が…どうやら皆考える事は同じ様だ。ていうか、選択の余地が無いと言う方が正解だろう。

アスパラベーコン、骨付きソーセージ、ホタテの唐揚げ、しゃけとこんぶのおにぎり(dscn0079.jpg)
11:00 今日の昼食

人混みを掻き分け、ホタテの唐揚げ\285と骨付きソーセージ\150と巨大なアスパラベーコン\100をGet。それにおにぎり2個を合わせて計\765とそれなりの値段になってしまったが、お弁当も意外に高かったんでまぁ良いか。電子レンジで温めた後、バスターミナルに戻ってさっそく平らげる。

取り敢えずホタテを食べられたので満足だ。

11時23分に北紋バスのポールスター号が発車。再びバスに揺られる。

窓の外は吹雪いたかと思えば数分後には薄日が射すという移り気なお天気。時折見えるオホーツク海は相変わらず穏やかだが、もちろん切ない願いを知ってか知らずか流氷の気配は一向に無い。

特にする事も無く退屈だと言えば退屈だが、こうして車窓からぼんやりと寄せては返す波を観るというのもなかなか楽しく、またアクセク働いている日常から考えるとメチャメチャ贅沢な時間の使い方だと言えよう。

な〜んてささやかな幸せを噛み締めていたら、食後の満腹感に誘われていつしか夢の中へ....。(-_-)zzz

流氷ラインバス ポールスター号 稚内〜紋別 \4,700

出港するガリンコ号(dscn0081.jpg)
13:40 紋別港を出港するガリンコ号

ポールスター号雄武(おうむ)日の出岬興部(おこっぺ)を経て、13時35分に終点の紋別ガリンコステーションに到着。

ちょうどガリンコ号が出港するところが見えたので、慌てて岸壁に出て取り敢えず写真を撮っておく。よく見ると港内にも少し流氷の余韻がある。ちょっと触るのは難しいが…

写真を撮ってたら、団体記念写真用の雛壇を片付けていた女性から突然声をかけられた。「あ〜ライダーだ!!まさかバイクで来てるの?」

ふふっ、YANOが持っている最も耐寒に優れる服装は革パンツにYAMAHAのCTXジャケット。間違いなくライディングウェアなのだ。気付かれるとバツが悪いなぁ…と思っていたのだが、誰にも気付かれないというのもちょっと寂しいかな?と思ってたとこだったので、何となくしてやったりな気分。(^^)

3月3日の流氷分布図(c030309.jpg)
3月3日の流氷分布図
白い部分が流氷帯

しばらく話をして、「残念だねぇ、一週間早ければ良かったのにねぇ」とひとしきり慰めの言葉を浴びたあと岸壁を去った。

改めてガリンコ号の受付カウンターに行くと、団体客らしき集団が大挙して受付中。その喧騒の中でも受付嬢の「本日はご乗船頂いても流氷はご覧になれませんが、それでもよろしいですか?」という声が聞こえた。

もちろんYANO的にはよろしくないので、予定通り網走まで行ってしまう事が最終決定する。

っとここで、行くのはいいが、宿を確保しなければならない事にも気付いて、慌てて網走流氷の丘ユースホステルにTEL。暫く待たされてちょっとドキドキしたが、ひとまず一泊二食を確保した。

またまた吹雪(dscn0083.jpg)
14:18 紋別付近にて

ここからは網走バスのしんきろう2号に乗り、紋別ガリンコステーション14時5分に出発。ちなみにこのしんきろう号にはバスガイド嬢が添乗する。

バスが出てしばらく走ると再び雪が降り始め、あっという間にまたしても吹雪。運がいいのか悪いのか?

このあたりも夏に走ったルートであり、どことなく見覚えのある風景が車窓を流れてゆく。夏と冬とでは印象は全く違うが、CBの積算計が50000kmを越えたポイントや休憩したコンビニ、道の駅などを自然と思い出す。

一面が氷で覆われているサロマ湖常呂町能取湖を横目に抜け、網走刑務所の前を通って16時15分網走駅に到着。

流氷ロ−ドバス しんきろう号 紋別〜網走 \2,700

まずは網走駅観光案内所に行ってパンフレットなどを物色しつつ、流氷観光砕氷船おーろら号での流氷の様子を確認。だいぶ遠くなっているようで今日は何とか観られたらしいが、今夜の風向きによっては明日はまたどうなるか予断を許さない微妙な状態だとの事だ。

LOVE AFFAIR〜秘密のデート/サザンオールスターズ

雪道(dscn0090.jpg)
16:47 登ってきた急坂を見下ろす

明日の事は明日決めるとしてさっそくユースに向かう。16時30分二ツ岩行バスに乗り、10分ほど走った明治入口で下車。たまたま一緒に降りた人と目が合い、どちらからとも無く「ユースですか?」。というわけで、5人で連れ立ってユースへと向かう。

いきなりバス停から続く雪の急坂を見上げていや〜んな気になる。しかも夕暮れ時の知らない道を歩くのは心細いものだがこれだけいれば心強い。「どこからですか?」等と話をしながらてくてく登る。

ここで今日ウトロから移動してきたご夫婦から「ウトロでは今朝流氷が戻って接岸したよ」という貴重な情報を入手した。もちろん明日もそうである保証は無いのだが、取り敢えず明日のウトロ行きが自動的に決った。

みんなでわいわい言いながら歩くこと10分ほどで、網走流氷の丘ユースホステルに到着。部屋はほぼ満室という事で、紋別で電話しておかなかったらOutだったようだ。

網走流氷の丘ユースホステル 一泊二食\4,700 TEL:0152-43-8558

荷物を片付けてお茶など飲んでたら程なく夕食と相成った。メニューは茹でたタラバの足2本とツメ、カニ鍋、カニの炊込みご飯、これでもかとオホーツクならではの蟹三昧。写真を撮る事も忘れてむさぼり食べてしまった。f(^^;;

相席となったのは大阪の男性と、京都の女性、和歌山の女性二人組。というわけで関西勢に制圧されてしまったが、メニューがカニだったせいか食べる方が忙しく、マシンガントークも弾まなかったようだ。それでも夕食後も食堂に居残ってコーヒーを飲みながら旅の話をしたり、またしても楽しいディナーであった。(笑)

20時頃からペアレントさんの観光案内スライド上映。流氷が全然期待できなければクロカンスキーツアーにでも参加しようと思っていたのだけど....。スライドが終わったらお茶の時間。今日は雛祭りと言う事でワインとうぐいす餅が振舞われたが、久々の和菓子はなかなか美味しかった。

それから温泉ツアーへGo!!、という事でクルマへ。外は真っ暗だし、タウンエースのリアシートだし、しかも窓は内側も凍ってるしで、どこをどう走ったのか全くわからない状態で飛ばす事15分程。無事にホテル網走湖荘へ。いや〜やっぱり温泉の広い湯船は気持ちいいぞ。もちろん、露天風呂にも浸かって髪を凍らせて喜ぶ事も忘れずに。(^^)

ユースに戻ったら再びコーヒーを入れ、君はどうする?あなたはどこ行くの?と明日の行動計画を練る。そんなこんなで網走流氷の丘ユースの夜は楽しく更けていった。

本日の移動距離 328.4 km

撮影:NIKON COOLPIX 800

明日への扉


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