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みちのく 2001晩秋

2001年11月9日(金)

杜の都、仙台へ

YANOとしては珍しいデイバッグ一つの身軽な旅装束で7時過ぎに家を出て、最寄りの箱崎駅からJR鹿児島線に乗り込む。今日は金曜日なので、通勤・通学客で比較的混んでいる。いつもの通勤路であるが足取りは100倍(当社比)も軽い。

博多駅福岡市営地下鉄に乗り継いで福岡空港には都合30分弱で到着。JAS仙台便は東京便と同じくお馴染みの第2ターミナルからの出発である。航空券はWebのチケットレスサービスで購入済なので、いつものように窓口横の自動チェックイン機にクレジットカードを投入して航空券を難なく手にする。エスカレーターに向かって歩きながら航空券をよく見ると、半券部分には印字が無いので搭乗手続き(チェックイン)がされていないではないか!!

そういえばモニターに「この航空券は自動チェックインが出来ません」と出ていたような…?

さっそく窓口嬢に事情を説明すると、今回はバースデー割得なのでチェックイン時に窓口で誕生日確認が必要だという事であった。なるほど納得、昨年の更新でゴールドではなくなってしまった運転免許証を提示して無事にチェックインを済ませる。

羽田便以外の空路は久々なのでちょっぴり緊張の面持ちで、第2ターミナル10番搭乗口からボーディングブリッジへ。JAS931便の機材はMD-81。、ジャンボ等新鋭機に馴れたYANOにとっては、初めて搭乗する2+3シートの狭苦しい胴体や、ライブで観る救命胴衣の説明等のデモンストレーションもまた新鮮で妙に嬉しく、ついつい見入ってしまう。座席も翼前窓側を確保、エンジンも後方配置なので極めて静かで快適である。

定刻の8時半福岡空港を離陸。左下に関門海峡と建設中の新北九州空港を見送り、暫くすると雲の絨毯の上。いつもより1時間早起きしたYANOは自動的に夢の中へ落ちてゆく....。目を覚ますと眼下には雪化粧を施した那須(だと思う)の山々が広がっていた。

着陸態勢に入る前にスチュワーデス嬢がやってきて、「お誕生日おめでとうございます」という言葉と共に手書きのメッセージを書いた絵葉書をプレゼントしてくれた。どうって事無いと言ってしまえばそれまでのささやかなものだが、忙しいフライト中の心遣いは嬉しかった。

JAS 931便 福岡8:30→仙台10:10
レギュラークラス:\9800(バースデー割得+チケットレス割引)

仙台駅(dscn0001.jpg)
11時10分 宮城県仙台市、仙台駅

定刻通り仙台空港10時10分到着。例の如く機長預りとなっていたVICTORINOX CLASSICを受け取って、10時25分のエアポートリムジン(\910)に乗り換える。エアポートリムジンは仙台東部道路仙台南部道路を順調に走って、11時仙台駅へ到着。

ちょっと昼メシには早いが、取り敢えず仙台名物牛タンを食べておこうと利休へと足を運ぶが、開店時間までまだ30分あって断念する。止むなく仙台駅で牛タン弁当(\1000)を買って11時42分発の東北新幹線「やまびこ9号」へ乗り込む。ちょっと混んでいたが、辛うじて座席を確保してさっそく駅弁を拡げる。う〜ん、1000円という価格を考えるとそこそこかな?

ちなみに、仙台名物の牛タンは「輸入牛肉を使っていますので狂牛病感染の危険はありません。ご安心してお召し上がり下さい」との事。地元の仙台牛じゃなかったんかい?

兵(つわもの)共が夢の後

一ノ関駅(dscn0007.jpg)
12時20分 一ノ関駅

慌ただしく食事を済ませ、12時6分一ノ関東北新幹線を下車。駅前に出ると新幹線の停車駅とは思えないような小ぢんまりとした駅舎にはちょっとビックリした。ただ駅前の雰囲気からするとなるほど妥当だな、という感じ。

ここからはバスに乗り継ぐのだが、ちょっとだけ駅前を散策してみる。大通りはそれなりに華やかだが、一本裏道に入ると物悲しい雰囲気に変る。どこにでもある風景なんだが、妙にせつなく感じるのは「みちのく」のなせる業か?

15分ほどで駅に戻ってKIOSKでPETボトルのお茶を買い込み、12時35分岩手県交通の「水沢駅通り」行きに乗車。当然最後尾に陣取る。しかしこのバス、はっきり言ってボロである。ここまで古いとクラシックカーと言っても差し支えないだろう。

一ノ関の街(dscn0010.jpg)
12時38分 一ノ関市、岩手県交通バス車内

もしこれが西鉄バスで配車されてきたら間髪入れずにお客様相談室に苦情を呈するところだが、「いい味出してるじゃん」と許してしまえるのもまた「みちのく」の哀愁ゆえだろうか?

車内には先客が3人。しかし市街地を抜ける頃にはみんな降りてしまい、運転手さんと二人っきりになる。すると突然前方から大きな声で「お客さん、どこまで?」と声を掛けられた。その一言をきっかけに運転手と観光客でありがちな会話が始まったのだが、何やらこの運転手氏は僅か3ヶ月前に千葉県の船橋市から異動(ていうか転職?)して都会と田舎のギャップに難儀している様子がありあり。

「一日中同じルートを行ったり来たりしてつまらん」から始まって、「工事渋滞等で遅れても代車や交代要員がいるわけでもないので、休憩時間を無くしてでも独りで走らないとならない」とか、「どれだけ遅れようが時刻表の本数は走らないといけない」と不平不満が留まるところを知らない。挙句には「チェーンの脱着も自分独りでやらないとならない」(これって当り前のような気がするのだが…?)とか、大人しく聞いてると思って愚痴る愚痴る。(笑)

そうは言いながらも「バスが停まってから席を立たんといかんよ」(実際は流暢な東北訛りだったが)と、お年寄りや子供に優しい運転手氏であった。

月見坂の紅葉(dscn0012.jpg)
13時10分 岩手県平泉町中尊寺にて

バスは道路工事の為に少し遅れて13時5分中尊寺到着。

中尊寺と言えば、平安時代末の奥州藤原氏栄華の象徴である国宝「金色堂」で知られるみちのくで最も高名なの観光名所のひとつ。今まで一度も訪れた事が無く、また紅葉の名所でもある事から今回真っ先にセレクトしたポイントである。

月見坂の紅葉(dscn0012.jpg)
13時37分 岩手県平泉町中尊寺にて

ちなみに漫画家の「中尊寺ゆつこ」は本名が藤原という事からきているとか。まぁ、どうでもいい話であるが。

ピークは少し過ぎているものの中尊寺の紅葉はなかなかイイ感じ。OLYMPUS OM-1とNIKON COOLPIX800を交互に構えて久々の写真小僧になる。

こうしてOM-1を真面目に構えるのは高校を卒業して初めてかも知れない。時に脇の土手に駆け上がり、時に砂利道にしゃがみこみ、無心にファインダーを覗くが、なかなかコレだと言う絵が決まらない。溺れるものはレンズにすがるの諺どおり、ズームを調整したり広角や望遠に変えたり試行錯誤しながらファインダーを覗くのもまた楽しい。

何と言ってもメカニカルシャッター独特の「カシャ!」というシャッター音が絶妙。繰り返し聞いていると「写真を撮っているんだ!」という気がして、純粋な気持ちでファインダーを覗いていた若かりし日々を思い出してくる。これもある意味ノスタルジーなのかな?

ただ惜しむらくは天気が下り坂でだんだん薄暗くなってしまったこと。とにかくもっと光を!!という気分であった。赤が紅く写らないのはやっぱり悲しいのである。

それでも利休で牛タンなんぞ喰ってたらさらに悲惨な状況になっていた事は間違い無いので、まだツイていると言い聞かせるようにして金色堂へ。拝観料(\800)を払ってしっかり拝んだが、なんだこんなもんか?という感じ。ちょっと過度の期待を抱き過ぎていたようだ。

東北新幹線「やまびこ」(dscn0056.jpg)
17時27分 盛岡駅にて

早くも街灯が点き始めた中尊寺を予定より1時間近く早い15時に撤収。またまた同じ運転手さんのバスで一ノ関まで戻る。今度は絶えずお客がいた為に愚痴は聞かされず、ホッとする。

一ノ関から16時11分発の東北新幹線「やまびこ43号」に乗車。仙台から各駅停車タイプなのでさすがに車内はガラガラであった。窓の外はもう夜の帳が迫り、車窓を移り行く風景を楽しむ事もできない。何となく損しているような気になっていたが、いつしか夜汽車の叙情的な雰囲気に浸っている自分に気付いた。

しかし無機質だと思っていた新幹線も滅多に乗らなくなると旅情を感じるようになるとは…新発見である。

田沢湖の夜

「こまち」の時刻表示(dscn0057.jpg)
17時29分 盛岡駅にて

16時54分東北新幹線の終点、そして松任谷由実『緑の町に舞い降りて -Ode Of Morioka-』(included『DESTINY』)で「ロシア語みたい」と言わしめた盛岡に到着。

1993年にはFTABIのオフラインミーティングで名物の「わんこそば」や「盛岡冷麺」を食べたり小岩井農場へ行ったりしたのだが、今回は残念ながらトランジットの地。いつか5月の緑の街を歩いてみたいものである。

ちょっと小腹が空いたので乗り換えのコンコースで巖手屋の南部煎餅を買い、秋田新幹線を待つホームで食べる。う〜ん、醤油の効いた草加煎餅もいいけど、素朴な南部煎餅の方が好み。(^^)

すっかり暗くなった盛岡駅のホームを抜ける風が冷たく感じ始めた頃、17時39分発の秋田新幹線「こまち19号」に乗車する。金曜の夜という事もあって車内はほぼ満席。しかしなんとか座席の確保に成功し、田沢湖まで30分黙って移動する。しかし、新幹線が離合待ち合わせをするのはやっぱり違和感があるぞ〜。

18時13分田沢湖到着。改札を抜け閑散とした駅前に出ると、真っ暗闇の中に似つかわしくないほどキレイでオシャレな駅舎が背後に浮かんでいた....。

田沢湖駅(dscn0059.jpg)
18時19分 秋田県田沢湖町にて

ミスマッチの感ありありの駅舎を振り返りつつ、100m程離れた駅前のバスターミナルへ。こっちは「これでもか!」というほどボロっちい造りで新幹線の駅舎とは対極を成すが、やっぱり田舎のバスターミナルとはこうでないと。

待合室にはストーブの近くに2人連れの女子大生風バックパッカーが一組だけ。どうやら乗るバスも同じみたいだが、時間も時間だけに互いに微妙な距離をキープする。缶コーヒーで一息入れている間にバスが乗り場に到着し、いそいそと乗り込む。いわゆる観光バスからの転換型で一ノ関のバスと比べるとえらく立派である。

都合4名を乗せたバスは18時半田沢湖駅前を出発。真っ暗闇の中を15分程で「公園入口」のバス停に到着した。

バス停のすぐ側にある田沢湖ユース(に隣接する国民宿舎田沢湖ロッジ)からはペアレントさんがお出迎えである。さっさと部屋に荷物を放り込んでまずは夕食。国民宿舎のお客と一緒の食堂で摂るわけだが、メニューは焼肉とカニのみそ汁などで、刺身?が一皿ほど少ないだけ。ユースとしてはまずまず豪勢な食事で満足した。

田沢湖ユースの夕食(dscn0060.jpg)
18時59分 田沢湖ユースにて

食後は温泉に浸かって、久々に歩いてかいた汗を流す。思ったよりヌルヌルして肌ざわりが良く、観光地の温泉と馬鹿にできない名湯であった。

浴後はロビーで同部屋のInazuma400氏と談笑。何やら北海道帰り(とは言うものの上陸は実質一晩だけ)のキャンパーだが、さすがにこの寒さでテントでは寝てられんという事で、ここに来てユースデビューらしい。しかし、こんな時期にこんな場所でライダーに出逢うとは思ってもみなかったので、お互いに話が弾んでしまった。

またバスターミナルから一緒だったバックパッカーはやはり東京の大学生で、就職活動の合間に現実逃避の旅行中という事。しかもカプセルホテルに泊ったり、函館のフェリーターミナルでビバークしたりと限られた予算で精一杯に頭を使ってアグレッシブに旅を楽しんでいる様子。久々に拍手したくなるような女の子達だった。

田沢湖ユースホステル 1泊2食 \4800 TEL:0187-43-1281
〒014-1201 秋田県仙北郡田沢湖町生保内上石神33-8

撮影:NIKON COOLPIX 800

明日への扉


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