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初日 2000年 8月11日(金)

夜空ノムコウ

結局直前になってもこれという目的地を決められないまま突入した20世紀最後の夏休み。取り敢えずGWに断念した山陰の海を最初のポイントに設定し、あとは現地で次の行く先を決める文字通りの風任せな旅である。

取り敢えずは海水浴客の渋滞が始まる前に下関を抜けてしまうべく早朝4時の出発を目論んで前夜は21時に寝たのだが、予想以上に早く1時過ぎに目覚めてしまった。なんぼなんでも早すぎるやろ、と再び寝ようとしたが結局2時近くになっても寝付けなかった為、意を決して繰上げスタートを決める。物は考えようで、早く出るだけ暑くなる前に距離を稼げる。睡眠時間3時間で夕方まで持たなければ途中で昼寝でもすればいい、という理屈である。

CBを車庫から出していつもの如く荷物をネットでリアシートに固定する。スタータースイッチ一発で元気にエンジン始動。毎度の事ながら実に頼もしい相棒である。2時半にゆっくりとスタート。先を急いで忘れがちな筥崎宮への参拝も今回は夕方に済ませたし、毎回どこか旅先で買う事に耳栓の準備もOK。更に今回はジュースの飲み過ぎに対策としてステンレスボトルに麦茶を入れて用意しており万事怠り無い。これまでにないパーフェクトなスタートといえよう。

行く手を照らすかのように明るく輝く月に見送られ、R3を一路東へ。意気揚々と『銀河鉄道999』を口ずさみながら、新しい旅の始まりである。

しかし、ご機嫌に走り出して程なくトラブル発生。なんとスピードメータの照明が半分消えていて、140km/h以下の部分が全く見えない状態になっていた。140km/h以下なんて使わないからいいか…という訳にはさすがにいかないが、走行性能や保安機能に支障があるわけではないので気が付かなかったf(^^;;事にした。

まず福間で最初の給油(6.5L \92/L)を済ませ、R3からR199R2と繋ぎ、4時前関門トンネルを抜けて本州は下関に上陸。

関門トンネル 軽自動車等 \100

美しい朝焼け(dscn0005.jpg)
5時19分 山口県豊北町阿川にて

下関からR191で久々の山陰路へと入る。4時20分頃に下関市吉見のセブンイレブンにてパンとコーヒーで軽い休憩。ノンストップとはいえ2時間弱で約100kmを走りきった事になる。思ったより車は多かったがまずまずのいいペース。取り敢えずは順調なスタートを切ったと言えよう。

この辺りから本格的な旅モードに突入。市街地を抜けると街灯も殆ど無い真っ暗闇の世界に変わり、星がたくさん見えてきた。夏の大三角なんて何年ぶりに観ただろう? 高校時代に少し天体写真に凝った事を思い出しながら、思わず『夜空ノムコウ』を口ずさみ物思いに耽る....。

土井ヶ浜を過ぎ、時計が5時を周った頃には東の空が少しずつ白み始めた。途中、川尻岬に寄り道しようと思っていたが、あまりに調子良く走っているし、陽が上る前では展望が期待できないのでそのままR191を東進。

程なく夜空の向こうからやってきたワクワクするような素晴らしい朝焼けがやってきた。幸先良い一日になりそうな予感がする。

限りなく美しいブルー

夜明の萩の海(dscn0008.jpg)
6時10分 山口県萩市、笠山展望台にて

6時過ぎには萩市内を通過して笠山(MAP)に到着。

穏やかな萩の海を眺めていると少し眠気を感じてきたのでベンチで少し横になった。しかしセミの鳴き声が煩くてとても寝てられず速攻で起き上がったのだが、その時には既に7時近かった。本人が思うより意外と疲れている事を思い知った。

7時過ぎに再び東に向けてスタート。左に北長門コバルトブルーに輝く海を眺めながら、潮風と共に快走。

R191からR9と繋がる通称北長門コバルトラインは適度なカーブとアップダウンがあり、いつ走っても退屈する事が無いオススメコース。また路面状態も良く交通量も少ないので実に快適なライディングを心ゆくまで堪能する事ができる。須佐町ホルンフェルス大断層(MAP)や砂浜の美しい三里ヶ浜など、本土で最も美しい海を満喫できるルートである。

コバルトブルーの海(dscn0017.jpg)
10時08分 島根県江津市大崎鼻にて

益田市からはR9と繋いで、9時過ぎ浜田市内に。少し混んでペースががっくり落ちてきたところで気分転換もかねて早くも2回目の給油(10.2L \102/L)

更に少しお腹も減ってきたので道の駅「ゆうひパーク浜田」(MAP)で再び足を止める。併設のモスバーガーへ…と思ったが家族連れなどで待たされそうだったので諦め、土産物屋でサンドイッチと牛乳を買って休憩室で碧い海を見ながらチープなブランチ。

でもでも、YANOにとっては目の前に広がる青い空と海は最高のご馳走である。ここ道の駅「ゆうひパーク浜田」は場所的に日没が特に美しいそうだが、まさかそれまで待っているわけにもいかないので10時前に再スタート。

途中石見海岸などで写真を撮りながらR9を快調に走行し、11時頃に温泉津(ゆのつ)温泉(MAP)に到着。だいぶ疲れも溜ったせいか眠気を催してきた事もあって、大休止を決める。

古き良き湯の街

藤乃湯、外観(dscn0023.jpg)
11時27分 島根県温泉津町、藤乃湯

温泉津温泉は1300年の歴史を持つ温泉で、何よりも近代的な施設や派手な歓楽街とは無縁な「古き良き湯の街」という雰囲気を残す街並みが実にイイ感じを醸し出している。大分の湯坪温泉を更に古くしたような、というと伝わるだろうか?

6軒の旅館と2ヶ所の公衆浴場があるが、YANOはレトロな映画館のような外観が印象的な公衆浴場藤乃湯に入った。中は典型的な昔の銭湯のような造り。お湯は"含石膏弱アルカリ泉"という事だが、海に近いので少し塩分も入っていそうな感じ。最初は熱く感じたがすぐに馴れ、他にはおじさんが一人だけだったこともあってのんびり入浴できた。とはいえまだ先があるので長湯は禁物。15分ほどであがって脱衣所でクールダウン。火照った体に自然の風が心地好い。

藤乃湯 \200 TEL:0855-65-4126

デジカメを片手に少し温泉街を散歩して、藤乃湯に戻るとMTB少年が荷を解いていた。話を聞くと福岡から大阪までフェリーで行って戻っているところらしい。逆コースになるが、バイクで10時間ちょいで来た道程をどれくらいかけて帰るのだろう.... いゃぁ、若いっていいねぇ。

鳴き砂の浜

美しい砂浜(dscn0027.jpg)
11時57分 島根県仁摩町、琴ヶ浜海岸

充分にリフレッシュしたところで11時40分に再スタート。

15分程で鳴き砂で有名な仁摩町琴ヶ浜に到着。写真のように非常に美しい海岸で、一度くらいはこんなとこでのんびり海水浴と洒落てみたいものである。お盆前の金曜日ということで比較的空いているが、7月の週末だともっと多いだろう。

で、肝心の鳴き砂は4年前のGWに来た時には全く鳴らなかったのであまり期待していなかったのだが、今回はいとも簡単に普通に歩くだけでキュッキュッと鳴いた。

確かに海水浴シーズンでそれなりに賑わっているにもかかわらず殆どゴミが落ちてなく、4年前のGWよりもキレイになっているのは驚嘆に値する。まさに地元の人々を始めとした鳴き砂の環境を守ろうという努力の賜物だと言えよう。いつまでもこうあってほしいと願いながら、琴ヶ浜を後にした。

再びR9を1時間ほど走って、13時頃に道の駅「キララ多伎」(MAP)に到着。ここはすぐ裏が海水浴場になっていて大賑わいであった。

紺碧の澄んだ海(dscn0041.jpg)
14時00分 島根県大社町日御碕

ここまでの半日間、休憩では家から持ってきた麦茶をちょこちょこ飲んでたが、それもここで終わってしまった。ここまで食事時以外での飲み物は一切買わずに済んでいるので、取り敢えずステンレスボトル作戦成功といえよう。

ここまで来ればもう出雲は目と鼻の先。まずは松江レイクサイドYHに電話して今宵の宿を確保。10分程の休憩で、移動主体のウサギさんモードからのんびりカメさんモードにスイッチして再スタート。ここからR9を離れて、取り敢えず海岸沿いに方向感覚だけを頼りに走る。

20分程で県道29号、大社日御碕線に出ると、あとは断崖上のワインディングを思いっきり楽しんで日御碕13時50分に到着。

美しい白亜の灯台は日本で11ヶ所の内部参観可能な灯台であるが、4年前に上ったので今回はパス。写真を撮りながら岬の遊歩道をぶらぶらして駐車場に戻った。小腹が空いてきた事もあってヤキイカ(\300)を所望。暑いけれどやっぱり屋外で喰うのはうまいねぇ。

一緒に500ccの缶入り麦茶を買って半分弱を飲んだところで残りをステンレスボトルに。これで今日一日は大丈夫。(^^)v

出雲の国

出雲大社本殿(dscn0044.jpg)
14時45分 島根県大社町、出雲大社

のんびりしたところで再スタートし、15分程で出雲大社に到着。

先日、出雲大社境内遺跡から太さ1mの宇豆柱が発掘されたという報道があったが、ちょうど八足門前ではまだ発掘調査が続いていて柱の跡などを観る事ができた。にわか古代ファンとしては予想外の収穫でラッキーだった。詳細は出雲大社公式Webの「出雲大社境内遺跡発掘調査速報」を参照

出雲大社は言わずと知れた縁結びの神様であるが、何はともあれ道中の安全と好天を祈願。

その後は、出雲大社横の県道23号、斐川一畑大社線一畑薬師へ向かう。確かにシーサイドの眺めがいいところはあるが、思ったより狭く案内板の少ない道に珍しく何度か迷わされて時間をロスした。ソロツーリングでなければおとなしくR431を走った方が良さそうだ。

一畑薬師(dscn0046.jpg)
16時29分 島根県平田市、一畑薬師

結局一畑薬師に付いた頃には16時半近く。夕刻とはいえ駐車場には数台の車があるのみで、人影も殆ど無くなった参道はちょっと寂しい。それでも、眼にご利益があるという事なので、少しでも視力が回復するように願をかける。まぁ言ってみれば職業病なんで、商売替えして田舎暮らしでもしないとしょうがないとは思うけれど....。

一畑薬師は少し高台にあり宍道湖の眺めが素晴らしい。木々の間にこだまするヒグラシの鳴き声に包まれて、宍道湖を眺めながらひと休み。まだ陽射しは暑いが湖を渡る風が涼しく心地好く、疲れた体に眠気を誘う。

さて、と重たくなった腰を上げて今宵の宿に向かう。R431を眠気と戦いながら東に向かい、行き過ぎたりしながら17時半に無事松江レイクサイドYH(MAP)に到着。さすがに松江温泉まで足を延ばす余裕は無かった。

松江レイクサイドYH 1泊2食\4400 TEL:0852-36-8620

国際交流

チェックインして部屋に向かうと、廊下の向こうから金髪の大男が歩いてくる。外人かな?染めてる兄ちゃんかな?と思ってたら「Hello」と流暢な英語で声をかけてきた。欧米人らしい。今夜は久々にカタコト英語の出番となりそうだ。

夕食の案内放送からしばらくして食堂へ。ヘルパーさんに一人離れた席へと案内され、?と思ってたら他のテーブルは10数名の外国人グループだといわれた。つまり日本人ホステラーはYANOだけという事になる。お盆前とはいえ夏休みの真っ最中だというのに日本人ツアラーは一体どこで何をしているんだ?

向こうはドイツ語を話しているようだ。たぶん英語も話せるだろうが、あまりに多勢に無勢な為にこちらから話し掛けるのもおっくうになって、黙って食事を済ませて部屋に戻る。ユースで黙って食事をするのはかなり寂しかった。

部屋に戻って地図を広げていると、同部屋の外国人が戻ってきた。だいぶいい年のオッサンである。でも食堂では見かけなかったような(白人はみな同じ顔に見える…)気がする。しかもスーパーで買ってきたらしいパンやヨーグルトなどを食べ始めたので、どうやら別口のソロツアラーらしい。しばらくしたら向こうから「パン喰うか?」と(当然英語で…)声をかけてきた。折角のご厚意だがホントに腹一杯だったので、緊張しながら「ノーサンキュー」と応えた。(通じたようでひと安心する…)

またしばらくすると再び「ヨーグルト喰うか?」と(しつこい様だが当然英語で…)声をかけてきた。今度は正直ウマそうだな…と思っていたので「サンキュー」と応えて、カップ入りのヨープレイトを有り難く拝領した。しかし、スプーンを持ってない事に気付いてどうしたもんかと途方に暮れていると、「振ってから飲めばいい」と(しつこい様だが…)教えてくれた。な〜るほど。流動食のようになっているヨープレイトだとこういう食べ方もあるんだ。丁寧に(といっても「Thank You」だが…)お礼を言った。

せっかく向こうからキッカケをくれたので、国際親善というと大袈裟だがご挨拶程度に話をしてみる。まずは「Where are you from ?」(間違ってても突っ込まないように…)と聞くと、笑いながら「オランダ」と答えた。オランダってめちゃめちゃ日本語(正式にはNetherlands)やん。さすがに日本に来るだけあって知日家である。滞在期間は3週間で栃木から富山とか金沢とか周って来ているらしい。日本はどう?とベタな事を訊いたところ、開口一番「暑い」と返ってきた。オランダではこの時期でも最高気温が20℃程度らしく、最低気温が25℃を上回る事も珍しくない日本の蒸暑さはunbelievableと嘆いていた。それから金沢で夕立に見舞われたらしく、晴天から一転して真っ黒な雲に覆われて雷雨に襲われる様はamazingであったという。それもこれもいい土産話になっているようで、楽しそうに話してくれた。中でも日本の街は非常に清潔でキレイだし、日本人は大変親切で優しいと喜んでくれていたのが嬉しかった。

彼に訊かれて答えに窮した質問に「なぜ都会は街角にゴミ箱があるのに、地方の街にはゴミ箱が無いのか?」というのがあった。確かにYANOのようなツアラーにとっても時々不便に思う事がある。元々田舎では屋外で飲み食いする時は自宅から弁当なり水筒なりを持っていき、外で食べ物を買ったり歩きながら飲み食いする習慣が少ないので街角でゴミの始末をする必要もないのではないかと思う。(と英語で表現する事ができなかった…)

YANO的にはコンビニのおかげでほぼ改善されたといってもいいが、歩きながら飲み食いする習慣がある外国人の場合は切実な問題と言えるだろう。しかしそれ以上に、自販機を置いておきながらゴミ箱を置かずに「ゴミは持帰れ」などと難儀な事をいう観光地が問題ではなかろうか。車ならばまだしも、遠くからはるばる来たライダーやサイクリストに対してわざわざ空き缶を持って帰れというのか? その場でゴミが出るモノを売っておきながらこの態度は腹立たしいにも程がある。何度か買ってから気付いて困った記憶があるので、ゴミ箱を撤去するなら自販機自体も一緒に撤去しとけ!! ぷんぷん。

身振り手振りを交えながら1時間ほど話をしたところでベッドに戻り、横になって地図を広げて明日の行程を考えていたらいつの間にか眠り込んでしまっていた....。たぶん21時前だっただろう。

本日の走行距離 503km

明日への扉

撮影:NIKON COOLPIX 800



Copyright (c) 2000 by Yoshihisa Yano