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Last-modified: 2024-04-10 (水)


[一語一絵/旅日記/2008小笠原]

硫黄島三島クルーズ / 2008-10-03 (金)

個別記事で航跡ログが表示されます

午前5時、デッキに出たら既に20人ほどの人影。人々の視線の先にある薄暗い海上には、神秘的に佇む[External]南硫黄島の影が見えていた。

スゴく幻想的だったので、精一杯の望遠で撮ってみたが、暗さと揺れでぶれまくり使い物にならず。しばし、ぼけーっと眺めるのみ。

5時半、薄明るくなったので妻を起してデッキへ連れて行くと、しぶしぶだったテンションが反転急上昇。

5時47分南硫黄島周回開始。

穏やかな海況にも関わらず高い波が打ち寄せる海岸線、そこからそびえ立つ断崖絶壁は人を寄せ付けない雰囲気プンプン。なるほど「有史以来無人島」と言う言葉を疑う余地も無いほど絶対的に佇いだ。

[External]南硫黄島の経緯として、明治19年に漂着した松尾丸の乗員3名が母島の漁船により救出されるまでの3年半生活していたという事実が知られているが、「この島で9人全員は生き延びるのはムリ」と判断して残りの乗員6名が島を去ったという話を船上で聞いた。

虹と南硫黄島
南硫黄島にて

去るも地獄、残るも地獄。「苦渋の選択」という一言で済まされる話じゃないのは間違いなく、どれほど辛い思いをした事だろうか、と思うとあまりに切なくて胸が張り裂けそうだ。

明るくなるとこれでもかというほどの[External]カツオドリの歓迎を受けている事に気付いた。

一角で雨が降っているところがあり、キレイな虹も観ることができた。

今回の楽しみはゲストとして乗船されている[External]南硫黄島調査隊の面々が乗船している。昨年11月にNHKの[External]サイエンスZERO[External]「知られざる南硫黄島 25年ぶりの上陸調査」[External]大自然ロマン 地球の旅 「新種発見!25年ぶりの上陸調査~小笠原南硫黄島~」として放送されていた、あの調査隊だ。

クルーズ中は解説員としてデッキ各所で大活躍。南硫黄島周回中も上陸地点や登攀ルートなどポイント毎に解説してくれて大変興味深かった。

「おがさわら丸」南硫黄島から1~2kmのところを2周して、7時16分離脱。次のポイント、硫黄島へ向かう。

アカアシカツオドリ
アカアシカツオドリ

カツオドリがまだ追走してくる。大きな船がよほど珍しいのかと思ったが、船の巻き起こす波を利用して飛ぶトビウオを狙って寄ってくるそうで、なるほど時折海面にダイブしている姿を見かけるわけだ。

1羽だけ目立っていたのが[External]絶滅危惧種に指定されている、[External]アカアシカツオドリ

読んで字の如く足が赤いのだが、飛んでるのを見る限り素人目には残念ながらわからなかった。しかし、全体的に真っ白なので[External]カツオドリとは一線を画す存在感だ。

やっぱり空飛ぶ鳥を捕る…撮るのは難しかった。

8時50分硫黄島の擂鉢山を確認。

擂鉢山
「おがさわら丸」から擂鉢山を望む

太平洋戦争の激戦地として知られる[External]硫黄島は3島の中でただ一つの有人島だが、一般民間人及び外国人の上陸は禁止されていて、基本的に自衛隊関係者しか駐留していない。その為、携帯電話も通じない…かと思ったが、[External]docomoの2Gサービスmovaならば使えるという噂もある。

なお自衛隊専用(軍用)飛行場でありながらIWO/RJAWという[External]空港コードが割り当てられている事から、METERやTAFの枠組みによる[External]天気予報[External]衛星写真なども簡単に取得できたりする。

知ってて損はないが、役に立つ事もたぶん無い、ので忘れてくれて構わない。

10時25分「おがさわら丸」硫黄島を1周半した後、戦没者への献花と黙祷を捧げ、再び北上開始。

12時08分[External]北硫黄島周回に。

南硫黄島と同じく高い波断崖絶壁は人を寄せ付けない雰囲気だが、なんとこちらには入植の歴史があり最盛期には石野村、西村という二つの村に約220人が住んでいたそうだ。

北硫黄島
北硫黄島にて

石野村跡地にはまだ僅かに痕跡が残っているそうだが、こうして海上から見る限り適当な平地は見当たらず人が住めそうには思えない。南硫黄島よりはマシかもしれないけど、個人的にはアウトだ。

「適当な平地は見当たらない」と書いたが、南側の標高700m以上の高所には「三万坪」と呼ばれる平坦な場所があって、明治時代には牛の放牧が行われていたらしい。「三万坪」まで牛を上げた方法・ルートがまだ謎のままだそうだ。

また学校は石野村にしかなく、西村からはあの激しい波が打ち付ける海岸線伝いに歩いて、更に海が荒れると数百mの山越えで行き来したそうだ。実際に目の当りにしてみて&どう考えても信じられないのだが、もしや都市伝説?

「おがさわら丸」北硫黄島を2周半した後、再び北上開始。

南硫黄島調査報告会
「おがさわら丸」にて

北硫黄島を離れた後は、船内レストランで[External]南硫黄島調査についての報告会。

ルート工作にあたった[External]ソルマルの金子さんや[External]ボニンブルーシマの島田さんなど、研究者以外の方のTVでは聞けなかった話がまた面白かったね。

母島の南付近で日没。残念ながら水平線に沈む夕日は観られなかったが、なかなか趣のある夕焼けだった。

母島東岸に差し掛かったあたりから降り始めた雨。父島では激しく降っているそうだが、肝心の「3島クルーズ」で降られる事を思えば大したことではなく、ここは甘んじて受け入れざるを得ない。

ほぼ定刻の19時二見港入港。こそっとデッキに仕掛けておいたGPSロガーDG-100を回収。万が一を考えて雨に濡れない場所を選んでおいた備えの勝利だ。

激しい雨の中、覚悟を決めてタラップを降りる。でもって三度[External]父ペンのお出迎え。ありがたい。

ちなみにこの日は大雨警報が出ていたのだが、[External]今年(平成20年)3月から予報警報等が小笠原諸島に出るようになった事を受けての適用第1号だった模様。へぇ~。

【参照】
●小笠原チャンネル http://www.ogasawara-channel.com/
●小笠原諸島返還40周年 http://www.ogasawara40th.com/
●小笠原村 http://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/
●小笠原海運 http://www.ogasawarakaiun.co.jp/
●首都大学東京 小笠原研究&小笠原研究施設 http://pleco07.biol.metro-u.ac.jp/~plantecol/ogasawara/
南硫黄島調査
●父島ペンション http://www.chichipen.com/
●自然体験ガイド・ソルマル http://www.h7.dion.ne.jp/~solmar/
●ボニンブルーシマ http://www.d3.dion.ne.jp/~k_shima/
●日経サイエンス http://www.nikkei-science.com/
南硫黄島探検記 2008年9月号
●環境省 生物多様性センター http://www.biodic.go.jp/
絶滅危惧種情報(動物)- アカアシカツオドリ -
●環境科学株式会社 http://www.kankyok.co.jp/
NUE 19_2 北硫黄島調査行