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[一語一絵]

失敗学のすすめ / 2006-11-22 (水)

9月に失敗知識データベースの件で取上げた[External]「失敗学のすすめ」(畑村洋太郎著)。

買ったはいいがなかなか落ち着いて読む機会を作れなくて置き去りにしていたのだが、ようやく五島から帰りのフェリーで読み切った。

相変わらず収まる気配の無い「いじめ」や「自殺」の背景にも小さなシグナルに気付かない鈍感さや、取り敢えず事件を隠そうとする組織の隠蔽体質が垣間見えるが、これも観点を変えれば小さな失敗に気付かなかったりごまかそうとする失敗の連鎖構造によく似ている。

寄ってたかって必要以上にヒステリックに糾弾するマスメディアはあまりに極端で例外だと思うが、多かれ少なかれ日本には失敗を短絡的に忌み嫌う風潮と言うか文化が根底にある為ではないだろうか。

失敗は歓迎すべきものではないが、そこに固執して個人の責任を追及するばかりでは生産的で無い。多くの場合失敗を招くに至ったバックグラウンドがあるはずであり、それを冷静かつ科学的に分析して改善する事で防げるものが多いはずだ。

局所的な飲酒運転追放キャンペーンも良いが、高齢・認知症ドライバーの問題はどうよ? 運転能力の欠如と言う観点で見るとどちらも同じ問題因子だ。これから間違いなく増加の一途をたどる高齢・認知症ドライバーには悪気が無いだけに質が悪い。そういう意味からも飲酒運転以上の深刻さをもたらす可能性がある。

[External]京都市バスの事故[External]西鉄バスの事故などは運転手が急に意識を失ったのではないかと言われている。そうならば失敗やミスではなく睡眠時無呼吸症候群や心筋梗塞などの病気が考えられるが、だからと言って「病気ならしょうがないねぇ」で済まされる問題でも無い。運転が乱れた時に自動的にブレーキを掛けるような仕組みがあれば事故を防げた可能性がないだろうか?特に多くの人命を預かるバスには何らかの施策があってしかるべき。

音も無く近づいてくるハイブリッド車の脅威に晒されるのも視覚障害者だけでは無い。健常者の背後は視覚障害者以上に注意散漫だし、その上高齢者は耳が遠くなる一方で若者は携帯やiPodで耳を塞いで歩いているも同然。電気自動車は言うまでもなくガソリン車自体も間違いなく年々静かになっているので、今から対策を立てていかないとドライバーに注意を促すだけでは破綻は目に見えている。

ドライバーや担当者など個人の責任追求にばかりに囚われている事は、あとあとで更に大きな問題を産み出す要因となる。100年前のダイムラー・ベンツからは想像も出来ないほど高い性能と頭脳を身に付けた現在、いま一度クルマとヒトの関係を見直す時期に来ているのではないかと思う。

大所高所から広い視野で物事を見るべき、組織の管理職たるポジションの人には読んでおいて欲しい1冊だ。

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1: ふくつのおじさん (11/23 07:41)
奇遇ですな,入院中にまさにこの特集がNHK総合で再放送されていて文庫本でしたが同じ本を買って来てもらって読みました。
特に製造業の管理職には私からもお勧めの本です。
↓放送は終わってしまいましたが,ご参考までに。
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200608/monday.html
http://www.nhk.or.jp/shiruraku/200609/monday.html
2: みちみち! (11/23 16:35)
やーのやーの、難しくも立派な事を言ってますな。
「たんつぼ小僧」聞いてる場合じゃないね・・・。