インターネットに繋がるものがコンピュータだけだった時代も今は昔。
外部との接続そのものを目的としてネットワーク機能を装備するゲーム機や複合複写機に限らず、ここ数年で爆発的に普及したHDD/DVDレコーダーやデジタル対応テレビなど家電製品へのネットワーク機能の浸透スピードは予想を越えるものだ。
意外なところでは電子レンジや冷蔵庫などの白物家電ですら、インターネットからレシピをダウンロードする為にネットワーク機能を実装しているものまであり、もはや時の流れと同じように避けては通れない道なのかもしれない。
そんな折、近未来の夢物語として語られていた悪い冗談が日毎にリアリティを増してきている事を改めて再確認したのが、日経ITProの連載記事特集「携帯・家電に忍び寄るネット・セキュリティの闇」。
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現実にネットワークをインフラとするインシデントもまた増える一方であり、好むと好まざるとに関わらず家電製品においても攻撃を受けてしまうリスクが高まっている。
一年前に東芝のHDD搭載DVDレコーダが“踏み台”にされる危険性が報告されていたのも記憶に新しい。しかしまだ“踏み台”程度の攻撃なんて序の口だ。熱器具などへの攻撃で火災に至ったり、空調の停止や自動車の制御で生命に影響を及ぼす危険性すらある。
これまでWindowsばかりが狙われていたのはガードが甘かったり欠陥情報が入手し易かったという事だけではなく、各社各様の家電の組込ソフトを狙って攻撃プログラムを開発したところで攻撃可能な範囲はたかが知れていたからだ。
しかしそんな状況も、もはや昔話。
例えばNTTドコモのFOMA901iシリーズを提供する6社のうち、2社がLinux、4社がSymbian OSを採用していて、マイクロプロセッサもほとんどARMコアがベースになっているそうだ。品質の向上を狙った標準化が裏では攻撃のリスクを高めてしまうという因果な結果は、言うならばこれも一種のユニカルチャーがもたらす危うさと言えよう。
だからと言って市場シェアでいうトップブランドが危なくてマイナーブランドなら大丈夫というわけではないし、言わんや家電にネットワーク機能が無用等と言うつもりもない。象印が「iポット」で実現したみまもりほっとラインというサービスは、ネット家電がこれからの現実社会にもたらす大いなる可能性の片鱗を知らしめたものだ。
個人的には"Simple is Beautiful"が美学なんだけど、組込ソフトウェアのインテリジェント化・高機能化による肥大化は留まるところを知らない勢いで、実に悩ましい。
【参照】
●日経ITPro http://itpro.nikkeibp.co.jp/
┣特集「携帯・家電に忍び寄るネット・セキュリティの闇」(1) 2005年11月7日
┣特集「携帯・家電に忍び寄るネット・セキュリティの闇」(2) 2005年11月8日
┣特集「携帯・家電に忍び寄るネット・セキュリティの闇」(3) 2005年11月9日
┗特集「携帯・家電に忍び寄るネット・セキュリティの闇」(4) 2005年11月10日